4-(5) どこまで隠すか

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 俺達の話を聞いていて、何か思いついたように雪華は顔を上げた。 「もしかしたら、友哉君はあきらの眷属というように認識されてしまったのかもしれないね」 「けんぞく、ですか」 「ああ。血を舐めあったことで、二人の間に何かしらの強いつながりが出来たのかもしれない。道切りの結界もあきらをターゲットにしたものだったのに、友哉君も出られなかったんだろう?」 「はい、出られませんでした」 「君があきらの眷属ならば、この世ならざるものが見えてもおかしくはない。あきらは大賀見家の中でも特別な子供だから」 「特別な子供?」  友哉が瞬きをする。 「ああ、あきらは……」  俺は制止するようにバッと手を伸ばし、ぎろりと雪華を睨んだ。  まさか『半分あやかしだから』などと言うつもりじゃないだろうな、と。  雪華は唇をひきつらせて、分かっているというように片手を上げた。 「あきらは歴史ある大賀見家の当主の子だからね」 「大賀見家の」  友哉は何か考えるように視線を宙にさまよわせた。  その顔が何かを不安に思っているような気がして、俺は友哉の手を触った。その指先がピクリと動く。 「どうした?」 「俺の眷属って言われるの、嫌?」 「なんでだよ、嫌なわけがない。眷属っていうのは身内とか従者って意味だろ。まぁ従者って言うのは時代劇みたいで馴染まないけどさ」 「うん、友哉は従者じゃなくて、俺のお兄ちゃんだよね」 「そうそれ。『あきらの眷属』って言われると、血のつながった兄弟になれたみたいでなんか嬉しいよ」 「うん……俺も嬉しい」  でも、友哉はさっき一瞬不安そうな顔をしていた。  無意識だったのかもしれないけれど。 「友哉君があきらの眷属だからといって、今までと何かが変わるわけじゃないから安心しなさい。ただ、もしかしたら式狼のほかにも何か見えるかもしれない。その時はすぐに相談して欲しい。素人の君には良いものか悪いものかの判断も出来ないだろうし」 「はい、分かりました」  友哉はふと、何かを思い出すように目線を上に向けた。  見えなくなっても、友哉の目はよく動く。嬉しければ目を細めるし、驚けば目を見開くし、つらければ目を伏せるし、悲しければ以前と同じように涙を流す。  友哉が俺を見てくれない分、俺は友哉の顔を四六時中見つめるようになった。今まで通りに友哉の表情は豊かなのに、俺と視線が合うことだけは無い。 「あの、俺、知り合いの左肩辺りがゆらゆらしているのを見たことがあるんですが」 「知り合い?」
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