(2)わたし、カリン、今あなたの後ろにいるの

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「どうして切るんだ? 花梨は友達なんだろう?」 ―― 花梨じゃない! 「え?」 ―― 絶対に本人じゃないよ! ―― だって、この家の中は全部見たもん! 誰もいなかったもん! 「誰も?」  俺はぐるりと周りを見回した。  3、4mほどの距離に横山と近田夫妻がいるし、もう少し離れたところにはパジャマを着た花梨がスマートフォンを持って立っている。  幽霊同士は互いの姿が見えていないのか? ―― この家は変だよ! もう何時間も経っているのに、瑠衣達、玄関にたどり着けないの。真っ暗な中をぐるぐる動いて……。 ―― ねぇ、どうやったら出られるの?  二人が肝試しをして行方不明になってから実は一年ほどが経っているのだが、本人達はまだたったの数時間だと思っている。それに、今は昼のまだ明るい時間帯なのに真っ暗な夜だと信じているようだった。 「友哉……あの子、近付いて来てる」  耳元であきらが囁く。  その時、芽衣の持つスマートフォンがけたたましく鳴り出した。 ―― や! いやぁ!  芽衣がスマートフォンから手を離した。落下するかと思ったが、それは空中に留まり大音量で鳴り続ける。  二人が悲鳴を上げて腰が抜けたようにへたり込んだ。宙に浮かんだスマートフォンはじりじりとふたりの方へ近づいていく。 ―― きゃー! きゃー! ―― いやー! こっち来ないでー! 「落ち着け、電話に出てみろ」 ―― やだぁ。怖い。 「友達からの電話だろ。本物の花梨からだよ。ちゃんと声を聞いてやれ」 ―― どうしてそんなことが分かるの? 「分かるよ。俺にはパジャマ姿の女の子の姿が見えているから」 ―― うそ、どこに? ―― 花梨、怒ってる? 「怒ってなんかない。泣いているよ。そばには誰もいなくて、持っているのはスマホだけで、そのスマホがつながるのは君達にだけ。どんなに心細い思いをしているか」  二人の視線が、宙に浮かぶスマートフォンへ向けられる。 「俺にも大切な友達がいる。友達が助けを求めていたら、俺は怖くても絶対に助けに行く」  あきらがぎゅっと俺の腕をつかんできた。力が強くてちょっと痛い。
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