31人が本棚に入れています
本棚に追加
そっと背中を撫でてやると、小さめの狼は嬉しそうに布団の上に乗ってきてそこに座り込んだ。
「うわ、お前、重いよ。足が……」
「大雅、離れろー」
すぐ横、というよりすぐ下であきらの声がして、小さい子はぴょんと跳ね上がって離れた。
「そこは俺の場所だっての」
ずりずりと這うような音がして、何かが足に乗ってくる。
「は? あきらか?」
「うーん、友哉、まだ眠いよー」
声のする方へ手を持って行くと、指先が柔らかな髪に触れた。どうやら自分の布団から匍匐前進して俺の足に乗って来たらしい。
「あきら、お前も重い」
「えー、いいじゃん。俺の頭もナデナデしてー」
「何言ってる。布団に戻れ、風邪ひくぞ」
「大丈夫ぅ、寒くないし、俺って頑丈だからー」
「あきら」
両手でその頭をくしゃくしゃにする。
「あうー、クシャクシャじゃなくてナデナデだよー」
「寝惚けてんのか?」
「ねぼけてないよー」
答える声はいつもより幼い感じがする。
「いくらあきらの体が頑丈でも、畳で寝ていたら俺は心配だよ。ちゃんと布団で寝ろ」
「うー、分かった」
拗ねたような声を出すと、あきらは俺から離れて行った。
「起こして悪かったな。今、何時だ?」
「ええとね、朝の4時すぎ」
「まじ? ほんとごめん」
「ううん、大雅が悪さしたんでしょ」
「その子、タイガっていうのか」
「大きいにみやびで大雅だよ。俺の式狼になったの。よろしくね」
小さい子があきらの声の方へ寄っていく。あきらに撫でてもらえたのか、嬉しそうに目を細めた。
「あきらの式狼って、どうやって? 何か儀式でもしたのか?」
「何もしてないよ。なんていうか、自然に?」
「自然に?」
「そう、自然に増えちゃうの。俺は大賀見の血を引いているからね。きっと、これからもたくさん式狼が増えると思う」
「そういうもんなのか?」
「らしいよ。ふぁぁ、俺まだ眠い」
大きなあくびが聞こえてくる。
「叢雲、碧空、大雅、見回りに戻って」
あきらの声に従って、三匹がのっそりと離れていく。
「見回りしてくれていたのか?」
「そうだよ」
「どうして? 今もまだ危険なのか」
「違う違う。大きくてお金持ちなおうちには防犯設備があるもんでしょ。その代わりだよ」
「へぇ、そういうものか」
「うん、いつもはバラバラに屋敷の中を歩いているのに、さっきはなぜか友哉のまわりに集まっていて何事かと思ったよ」
「あ、そうだ、それなんだけど」
「なに?」
「さっき銀箭っていう狼もここに来ていた」
「ここに? 友哉の所に?」
「起きたら四匹もいたからビックリしたよ」
「大丈夫だった? 何もされてない?」
「ああ、何も。声をかけたら逃げてしまったけど」
あきらは少しの間、黙った。
最初のコメントを投稿しよう!