5-(2) 依存しているのは

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 そっと背中を撫でてやると、小さめの狼は嬉しそうに布団の上に乗ってきてそこに座り込んだ。 「うわ、お前、重いよ。足が……」 「大雅、離れろー」  すぐ横、というよりすぐ下であきらの声がして、小さい子はぴょんと跳ね上がって離れた。 「そこは俺の場所だっての」  ずりずりと這うような音がして、何かが足に乗ってくる。 「は? あきらか?」 「うーん、友哉、まだ眠いよー」  声のする方へ手を持って行くと、指先が柔らかな髪に触れた。どうやら自分の布団から匍匐前進(ほふくぜんしん)して俺の足に乗って来たらしい。 「あきら、お前も重い」 「えー、いいじゃん。俺の頭もナデナデしてー」 「何言ってる。布団に戻れ、風邪ひくぞ」 「大丈夫ぅ、寒くないし、俺って頑丈だからー」 「あきら」  両手でその頭をくしゃくしゃにする。 「あうー、クシャクシャじゃなくてナデナデだよー」 「寝惚けてんのか?」 「ねぼけてないよー」  答える声はいつもより幼い感じがする。 「いくらあきらの体が頑丈でも、畳で寝ていたら俺は心配だよ。ちゃんと布団で寝ろ」 「うー、分かった」  拗ねたような声を出すと、あきらは俺から離れて行った。 「起こして悪かったな。今、何時だ?」 「ええとね、朝の4時すぎ」 「まじ? ほんとごめん」 「ううん、大雅が悪さしたんでしょ」 「その子、タイガっていうのか」 「大きいにみやびで大雅だよ。俺の式狼になったの。よろしくね」  小さい子があきらの声の方へ寄っていく。あきらに撫でてもらえたのか、嬉しそうに目を細めた。 「あきらの式狼って、どうやって? 何か儀式でもしたのか?」 「何もしてないよ。なんていうか、自然に?」 「自然に?」 「そう、自然に増えちゃうの。俺は大賀見の血を引いているからね。きっと、これからもたくさん式狼が増えると思う」 「そういうもんなのか?」 「らしいよ。ふぁぁ、俺まだ眠い」  大きなあくびが聞こえてくる。 「叢雲、碧空、大雅、見回りに戻って」  あきらの声に従って、三匹がのっそりと離れていく。 「見回りしてくれていたのか?」 「そうだよ」 「どうして? 今もまだ危険なのか」 「違う違う。大きくてお金持ちなおうちには防犯設備があるもんでしょ。その代わりだよ」 「へぇ、そういうものか」 「うん、いつもはバラバラに屋敷の中を歩いているのに、さっきはなぜか友哉のまわりに集まっていて何事かと思ったよ」 「あ、そうだ、それなんだけど」 「なに?」 「さっき銀箭っていう狼もここに来ていた」 「ここに? 友哉の所に?」 「起きたら四匹もいたからビックリしたよ」 「大丈夫だった? 何もされてない?」 「ああ、何も。声をかけたら逃げてしまったけど」  あきらは少しの間、黙った。
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