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「せっ……じゃなくて、雪彦おじさん」
「分かっている。今からここに結界を張る」
「結界? おお、なんか格好いい単語が出てきたな」
「どっちにしてもミコッチには見えないけどね」
「うわ、そのドヤ顔、なんか悔しい」
「え、じゃぁ俺には結界ってやつが見えるんですか?」
「おそらく友哉君には見えるだろうね」
「やった」
「ええ、なんか俺が一番普通なはずなのに、すげぇ疎外感」
「ミコッチは見えないだけじゃなくて、一切の影響を受けないから、実はこの中で最強かもよ」
「はぁ、変な慰めはいいよ」
雪華は腕時計についているコンパスを見てから深呼吸すると、ちらりと俺を見た。
狐は出て行けと言いたいんだと分かって、俺は顔をしかめた。
「竹久とその小鬼は結界の中にいてもいいのか」
「これくらいの害にならないものは結界からはじかれることはないんだ」
「害……?」
結界に入れない俺は害ってことか。
軽く睨むと、雪華はニヤリとして俺の肩を叩いた。
「害というのは、悪いもののほかに、力の強いものも含まれるんだよ」
ミコッチが俺と雪華を見て何か言いたげな顔をしたが、友哉の前では余計なことを言わなかった。脅しがきちんと効いているようだ。
「ええと君は御子神君と言ったね、吉野くんをそこに座らせて、君は友哉君のそばにいてくれるかい」
「え、は、はい」
吉野をコンクリートの地べたに座らせ、ミコッチが近づいて来る。
「友哉、ミコッチにつかまってて」
「あきらは?」
「狼は結界に入れないから、あいつらと一緒に離れたところで待ってる」
「了解」
友哉の手をミコッチの腕につかまらせる。
「ん、これなんだ? 御子神、腕を怪我しているのか?」
友哉がミコッチのアームホルダーに気付いて声を上げる。
「ああ、この前転んじゃって骨折したんだ」
「それならそうと、会った時に言ってくれよ」
「いやなんか心配するかと思って」
「そりゃ心配するよ。でも目が見えないからって内緒にされると地味にショックだ」
「ごめん。次に怪我したら必ずすぐ言うから」
「次にって、いやもう怪我はするなよ」
「あはは、そうか。なるべく怪我しないようにするよ」
笑いながら話す二人から離れ、雪華に近づく。
「んじゃ、叢雲と碧空貸して」
「ああ、合図したら、竹久君の体からあれが離れるはずだ。あの御大ごと食べてくれ」
「分かった」
「叢雲、碧空、あきらに従うように」
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