5-(4) 踏切に立つもの

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「竹久の幽霊は俺には見えなかったし、ほとんどの人間は見ることが出来ない。倉橋の両親にだって幽霊は見えないだろ。でも、倉橋には霊が見えるし話も出来る。それってなんかヤバイ気がするんだ」 「うん、ヤバイね」  友哉の中途半端な見え方はひどく危険なのに、友哉自身は霊に対して無防備すぎる。 「盲目なのにそんな怪しげなものだけが見えるなんて、きっと誰にも理解されない。ただでさえハンディを抱えているのに、さらに余計なものが見えてしまうなんてどんな無理ゲーだよ」 「うん、ほんとヤバイよ。ミコッチみたいに何も見えない方がはるかにましだ」  ミコッチは冷たい目で俺を見る。 「俺は、三乃峰の病院であったことを忘れられない。あの出来事は世間的には、野犬に襲われたことによる集団パニックということになったけど、俺はそうじゃないことを知っている。お前が人でなしの悪魔だってことをよく分かっている」 「はは、ひどい言い方」 「でもさ……お前は倉橋だけは守るだろ」 「もちろん守るよ」  ミコッチはハーッと息を吐いた。  雪華も吉野も聞こえているはずなのに、俺達の会話に入ってこようとはしない。 「そもそも倉橋がそんなんなったのはお前のせいなのに、結局お前にしか倉橋を守れないなんて、すげぇ癪だしすげぇムカつく」 「ミコッチ、最近俺のこと久豆葉ちゃんって呼ばなくなったね」 「そりゃな。俺は家族や彼女の名前を出されてお前に脅されたんだぞ」 「じゃぁもう友達じゃない?」  ミコッチはガリガリと頭をかいてから、俺を睨んだ。 「久豆葉ちゃん(・・)、倉橋をこれ以上ひどい目に合わせるなよ」 「うん」 「大事にしてやれ」 「うん、大事にする」  俺は友哉の髪の毛に顔を寄せて、その清浄な空気を胸に吸い込んだ。  
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