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「竹久の幽霊は俺には見えなかったし、ほとんどの人間は見ることが出来ない。倉橋の両親にだって幽霊は見えないだろ。でも、倉橋には霊が見えるし話も出来る。それってなんかヤバイ気がするんだ」
「うん、ヤバイね」
友哉の中途半端な見え方はひどく危険なのに、友哉自身は霊に対して無防備すぎる。
「盲目なのにそんな怪しげなものだけが見えるなんて、きっと誰にも理解されない。ただでさえハンディを抱えているのに、さらに余計なものが見えてしまうなんてどんな無理ゲーだよ」
「うん、ほんとヤバイよ。ミコッチみたいに何も見えない方がはるかにましだ」
ミコッチは冷たい目で俺を見る。
「俺は、三乃峰の病院であったことを忘れられない。あの出来事は世間的には、野犬に襲われたことによる集団パニックということになったけど、俺はそうじゃないことを知っている。お前が人でなしの悪魔だってことをよく分かっている」
「はは、ひどい言い方」
「でもさ……お前は倉橋だけは守るだろ」
「もちろん守るよ」
ミコッチはハーッと息を吐いた。
雪華も吉野も聞こえているはずなのに、俺達の会話に入ってこようとはしない。
「そもそも倉橋がそんなんなったのはお前のせいなのに、結局お前にしか倉橋を守れないなんて、すげぇ癪だしすげぇムカつく」
「ミコッチ、最近俺のこと久豆葉ちゃんって呼ばなくなったね」
「そりゃな。俺は家族や彼女の名前を出されてお前に脅されたんだぞ」
「じゃぁもう友達じゃない?」
ミコッチはガリガリと頭をかいてから、俺を睨んだ。
「久豆葉ちゃん、倉橋をこれ以上ひどい目に合わせるなよ」
「うん」
「大事にしてやれ」
「うん、大事にする」
俺は友哉の髪の毛に顔を寄せて、その清浄な空気を胸に吸い込んだ。
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