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「え?」
ひばりちゃんの向いている方を振り返ると、小さな小さな光がいくつも俺の目に映った。
「何だろあの光……」
「光?」
「ああ、数十個くらいの小さな点々が見えるような」
よく見ようと身を乗り出した時、俺のスマートフォンの通知音が鳴った。反射的にポケットの中に手を入れる。画面に指が触れた途端に、機械の音声が通知内容を告げる。
『リンリン 未読一件 お母さん 緊急です。すぐこの動画を見て』
緊急という言葉にびっくりしてすぐリンリンのアプリを開く。母さんのメッセージに動画が添付されているので、すぐに再生した。
『次のニュースです。死傷者が100人を超えています。本日、午後3時ごろ、〇〇県三乃峰市の三乃峰総合病院で、野犬数匹が入り込み……』
「ダメだ、友哉、止めて!」
「え?」
あきらの大きな声に驚いて、手からスマートフォンが落ちた。
ガスッと落下音がしたが再生は止まらなかった。
『……重軽傷を負いました。さらに逃げようとした患者らが階段などで将棋倒しになり、100人以上の死傷者が……』
「ダメ、聞いちゃダメだ!」
悲鳴のように言って、あきらがスマートフォンを拾ったのが分かった。
「ちょ、なんだよどうして? 再生が止まらない!」
あきらの泣きそうな声に重なるように、ニュース番組の音声が聞こえてくる。
『……現在分かっている死亡者は5人です。三乃峰市のタドコロコウジさん53歳、同じく三乃峰市のサカモトユウコさん27歳、御前市のクラハシマサヤさん42歳、妻のクラハシシズカさん40歳、同じく御前市の……』
息が止まった。
今、何て?
誰が死んだって?
『繰り返します。今分かっている死亡者は五人、三乃峰市の……』
5人の名前がまた読み上げられる。
ドクドクと心臓が鳴る。
息をしようとしたら、喉の奥でひゅうと変な音がした。
『……さん27歳、御前市のクラハシマサヤさん42歳、妻のクラハシシズカさん40歳……』
倉橋昌也は父さんの名前だ。
倉橋静香は母さんの名前だ。
父さんと母さんが、死んだ……?
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