5-(7) 襲撃

2/4
前へ
/370ページ
次へ
「え?」  ひばりちゃんの向いている方を振り返ると、小さな小さな光がいくつも俺の目に映った。 「何だろあの光……」 「光?」 「ああ、数十個くらいの小さな点々が見えるような」  よく見ようと身を乗り出した時、俺のスマートフォンの通知音が鳴った。反射的にポケットの中に手を入れる。画面に指が触れた途端に、機械の音声が通知内容を告げる。 『リンリン 未読一件 お母さん 緊急です。すぐこの動画を見て』  緊急という言葉にびっくりしてすぐリンリンのアプリを開く。母さんのメッセージに動画が添付されているので、すぐに再生した。 『次のニュースです。死傷者が100人を超えています。本日、午後3時ごろ、〇〇県三乃峰市の三乃峰総合病院で、野犬数匹が入り込み……』 「ダメだ、友哉、止めて!」 「え?」  あきらの大きな声に驚いて、手からスマートフォンが落ちた。  ガスッと落下音がしたが再生は止まらなかった。 『……重軽傷を負いました。さらに逃げようとした患者らが階段などで将棋倒しになり、100人以上の死傷者が……』 「ダメ、聞いちゃダメだ!」  悲鳴のように言って、あきらがスマートフォンを拾ったのが分かった。 「ちょ、なんだよどうして? 再生が止まらない!」  あきらの泣きそうな声に重なるように、ニュース番組の音声が聞こえてくる。 『……現在分かっている死亡者は5人です。三乃峰市のタドコロコウジさん53歳、同じく三乃峰市のサカモトユウコさん27歳、御前(みさき)市のクラハシマサヤさん42歳、妻のクラハシシズカさん40歳、同じく御前市の……』  息が止まった。  今、何て?  誰が死んだって?   『繰り返します。今分かっている死亡者は五人、三乃峰市の……』  5人の名前がまた読み上げられる。  ドクドクと心臓が鳴る。  息をしようとしたら、喉の奥でひゅうと変な音がした。 『……さん27歳、御前市のクラハシマサヤさん42歳、妻のクラハシシズカさん40歳……』  倉橋昌也は父さんの名前だ。  倉橋静香は母さんの名前だ。  父さんと母さんが、死んだ……?
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加