5-(7) 襲撃

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 母さんからのメッセージに母さん自身の死亡のニュースが添付されていたのか?  これはいつのニュースだ?  病院で何があったんだ?    何が何だか分からなくて混乱して呼吸が乱れる俺の耳に、走るような足音があちこちから聞こえてくる。顔を上げると小さな点々が周囲に広がっていくのが見えた。  あの光はひばりちゃんの言っていた光るブレスレットなのか?  ブレスレットを身に着けた人が、数十人も走っているのか?  あきらが俺の肩を抱くようにして手を回してくる。 「友哉、逃げよう」 「逃げるってどうして? いったいどこに?」 「とりあえずここから出よう。大雅! 連翹(れんぎょう)!」  あきらの呼びかける声に対して、いつものように狼が出てこない。 「琥珀、翠玉、磯良(いそら)!」  あきらは声を張り上げるが、それでも狼の姿が無い。 「式狼が呼び出せない?」  あきらの途惑った声が聞こえた直後、強い刺激臭が鼻を突いて俺は咳き込んだ。 「なんだこれ。煙?」  あきらもゲホゲホと咳き込みながら、俺の肩を押して進み始める。 ―― やだ! やだ何これ、怖い!  ひばりちゃんが叫んで飛んでいく。 「ひばりちゃん?!」 「パンダの中に避難した。友哉、俺らも逃げないと!」  ビィィン、と何かの弦をはじくような音が聞こえた。  あきらの体がビクッと跳ねる。  さらに四方八方からビィィン、ビィィンと不気味な音が聞こえてくる。  またあきらの体がビクビクと揺れる。 「あきら? どうした、あの音は?」  あきらがハッハッと息を吐く。 「弓だ……」 「え、弓?」 「弓の(つる)を鳴らしている」  弓?  こんな住宅街の公園の中で? 「だってあれ、ひとつじゃないぞ。十以上の音が重なって聞こえる」 「あれはきっと魔除けの弓だ。囲まれてしまった……」 「囲む? 俺達を? どうしてっ……げほ、げほ」  煙を大きく吸い込んでしまい、俺はむせた。あきらがハンカチを渡してくるから、それで鼻と口をふさぐ。 「は……憑き物筋の家が拝み屋を雇うなんてな」  つきものすじ? 拝み屋?  あきらの声がいつもと違って低くお腹に響いて来る。 「あきら、いったい何が」 「大丈夫。友哉は……げほっ……絶対に、俺が守るから」  刺激臭に涙が出てくる。  あきらの声も苦しそうだ。 「やっぱり大賀見家の奥様なのか?」 「奥様……? ああ、そうかもね……」  あきらは軽く咳き込み、また低い声で言った。 「魔物を使役する家が、魔物を祓う拝み屋を使うなんて、なりふり構わずってやつらしいな」
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