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「うわ、やっぱり鳥居じゃん」
「え、どうした?」
「えっとね……」
友哉の方に振り向こうとして俺は気付いた。
この部屋の大きな窓に赤いテープが貼ってある。窓枠をうまく利用して、鳥居の形を作っている。
山の鳥居と、田んぼの鳥居を結ぶ線はまっすぐこの部屋にぶつかり、そしてここにも鳥居があるのだから……。
ぞわりと寒気が走った。
「うわこれ最悪。自称神様案件じゃん」
この国は、八百万の神様がいる国だ。神様と呼ばれるもの、神様を自称するものが無数に存在している。でも、神と一口に言っても、それは玉石混淆、種々雑多、良い神もいれば恐ろしい神もいる。中にはひどく厄介な悪霊のようなものも……。
「あきら? 神様案件って?」
俺は友哉のそばへ走り寄った。
「友哉、あとはハルに任せた方がいいかも知れない。この部屋、土地の神様を招き入れる構造になってる」
コンコンと小さく窓が鳴った。
ぎょっとして振り向くと、小学生くらいの女の子が立っている。
「あけて」
他の部屋の住人だろうか?
白いブラウスに赤いジャンパースカートを着て、赤い帽子を被っている。
「あけて」
幽霊アパートの噂がある部屋に、人が入るのを見て不思議に思ったんだろうか。
「ねぇ、あけてよ」
「君、どこから来たの? ここは危ないからおうちに帰った方がいいよ」
俺が言っても女の子は不思議そうに窓から覗き込んでいる。
「あきら? 誰と話しているんだ?」
「えっと、住人の女の子かな? 窓の外に……」
俺はハッとした。
「え? 友哉は聞こえなかった? 女の子の声」
「女の子? いや、何も」
ぞわっと全身に鳥肌が立つ。
俺はがばっと友哉を抱き寄せた。
「おわ!」
友哉が驚いた声を出したが、かまわず後ろに庇って俺はもう一度窓を見た。
女の子は一見普通の子供のようで、どこもぼやけていなくて、生きている人間のようにしか見えない。
「あきら、また幻覚か?」
「そうかも……」
ゴクリとつばを飲み込む。
女の子は笑顔のまま窓ガラスをたたき始める。
「あけて、あけてよ」
女の子の小さな手が何度も何度も窓を叩く。
「あーけーてー」
「友哉、ここを出よう」
「え、でも」
「あけてー、あけてー、あけてー」
女の子が両手でバンバンと窓を叩き始める。
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