6-(5) 食べられた16人

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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  病室の引き戸をそーっと開けて、中を覗く。  友哉は雪華の介助を受けながら朝食を食べていた。 「不思議ですね。病院って、亡くなる人も多いからもっと幽霊がいるのかと思っていたんですけど」 「ああ、ぜんぜんいないな」  雪華はニコニコと笑みを浮かべて友哉を見ている。  昨夜の内に俺と雪華の式狼に交代で食べさせたから、ここら辺一帯の霊もあやかしもきれいに一掃されている。 「いるのは狼だけですね」 「そうだな。狼が怖くて、霊は隠れているのかもしれないよ」 「ああ、そっか」  友哉はふっと笑った。  それだけで、友哉のまわりがうっすらと発光しているように見える。  雪華やハルが昨日言っていたことは正しいと思った。友哉は出会った時からきれいだったけれど、目が見えなくなってからますますきれいになった。きれいになりすぎて、現実感が薄くなって不安になるくらいに。  友哉のまわりをウロウロしていた大雅が、びょんとジャンプして俺の目の前に来る。 「あきらか?」  シッポを振る大雅を目で追って、友哉がぱっと笑顔を向けてきた。 「うん、ただいま……」 「お帰り。遅かったな」 「えっと、買い物ついでにちょっと散歩してたんだ」  と、俺はコンビニの袋をがさがさと揺らした。 「お菓子ばっかり買ったんだろ」 「はは、ばれた?」 「ほどほどにしろよ。虫歯になるぞ」 「はーい」  ほんとはコンビニに行くついでに誠司の親を脅しに行ったんだけど。そして、ちょっとヤバそうな死体を見つけてしまったから、一応雪華に報告したいんだけど。  友哉の前で死体の話をするのは気が引けて、リュックからスマートフォンを取り出す。 「あきら、朝食は? ルームサービスを頼むか」  雪華が内線電話に手を伸ばす。 「ルームサービス? ホテルみたいだね」 「特別室だからな」 「すごいよな。俺は普通の部屋でも良かったんだけど」 「他人がいると狼を出しにくいんだよ、友哉君」 「ああ、確かに。見えない人の前では彼らに話しかけづらいですよね」 「おじさんはもう朝ごはん済んだの?」 「ああ、さっきな」 「何食べたの?」 「焼き魚の和定食だ。朝は和食か洋食か選べる」 「おいしかった?」 「まぁ、それなりだな」  三人でたわいのない会話をしながら、『大賀見英司が死んでた。左の腹から尻を食われてた』とメッセージを打ち込んで雪華に送った。  ピコン、と雪華のスマートフォンが鳴る。 「あれ? スマホの音?」  友哉が首を傾げる。
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