6-(5) 食べられた16人

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 画面の右上に大きく『野犬か? 連続殺人か? 14人死亡1人重傷』とテロップが出ていて、その下に『狼憑きの噂の旧家 呪いか 祟りか 地元住民騒然』と少し小さめの字で書かれている。 『武井さーん、今回は被害者15人がすべて同じ家の親族ということで、地元ではすごい騒ぎになっているということなんですが』  女の声が少し興奮気味に聞いている。 『はい、そうなんです。三乃峰市周辺では、大賀見家というと市議会議員を多数輩出していて、不動産・物流・病院・教育など地域の暮らしと産業を支えてきた名家だということです。江戸時代から続く歴史の古い家なので実は狼が憑いているなんて怖い噂もあるそうなんです』 『はぁ……狼憑きの家ですかぁ。いわくつきの旧家でそんな事件が起こるなんて、まるで横溝正史の小説のようですねぇ』 『ここら辺は、野犬の被害が多いことでも有名なんです。それで、大賀見家の悪口を言うと狼に襲われるとかいう言い伝えまであるということなんです』 『野犬ですか? そんなに山奥ってわけでも無いのに。その旧家でドーベルマンでも飼っていたのかな』 『いやいや、それこそ狼の妖怪の仕業なんじゃないですかぁ?』 『はは、マンガじゃないんですから。現実的には大型犬か何かを訓練してやらせたってことじゃないですかね』 『15人がそれぞれ別の場所で襲われたんですよね。犯人はたった一晩で次々と犯行を重ねた。そうなると複数犯ってこともあるのかな』 『そうですよねぇ。いくら大きい犬だって10人以上食べたらお腹いっぱいですよねぇ』 『え、食べたなんて報道ありました?』 『あ、違うんですかぁ? 私はてっきり』 『遺体の体の一部が欠損していたなんて報道もありましたね』 『じゃぁやっぱり食べたんですよ、こわーい』 『実は一ヶ月ほど前にもひとり亡くなっているんです。高校生なんですが』 『その高校生も獣に襲われたんですか』 『いえ、学校の屋上からの転落死で容疑者も捕まっています』 『では、今回とは無関係ですかね』 『もし関係あるとすると、被害者は16人ということになりますけど』  コメンテーターらしき男女が、画面の中で喜々として話し出し、画面には被害者の名前と顔写真が順番に映し出されていく。その中に大賀見英司の顔もあった。 「16人も……?」  友哉が蒼ざめた顔で呟いた。 「どうして、そんな」 「久豆葉あきらが殺したのではないのか?」  友哉の声に重ねるように、ハルが聞いてきた。 「久豆葉あきらからは、ぷんぷんと血の臭いがしているが?」 「俺は誰も殺していない。臭いがついたのは、多分、死体を近くで見ちゃったから……」 「死体を? あきら、どういうことだ?」  友哉の顔がさらに蒼ざめる。
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