6-(5) 食べられた16人

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 優しい友哉に死体の話なんてしたくなかったのにと、俺はぎろりとハルを睨みつけた。  ハルは対抗するようにさっと指を立て、ぶつぶつと小声で何かを唱えだす。 「(てん)()(げん)(みょう)(ぎょう)(じん)……」 「え、ハルさん? またあきらに何かするつもりですか」  友哉が俺を庇うように前へ出ようとするから、ハルはびっくりして唱えるのをやめた。 「倉橋友哉、なぜそいつを庇う」 「あきらは人を殺したりしない。あきらのことは俺が一番よく分かっています」 「私はそうは思わないが」  友哉はハルを無視するように俺の方を向いた。 「あきら、死体を見たなんて、いったいどこで? 危ないことは無かったのか? どうして俺に黙っていたんだ?」 「ごめんなさい……。俺、怖くて……言葉にするのもすごく怖くて……」  子供のように泣きそうな声を出すと、友哉はハッとしたように俺の手を強く握ってきた。 「そうだよな、怖かったよな」 「黙っていてごめんなさい」 「俺は心配なだけだ。あきらは怖がりなのに死体を見ちゃったなんて……大丈夫か?」 「うん……うん、すごく怖かった……」  友哉の前では幽霊を怖がって見せたり、悪夢で眠れないと甘えてみたりしてきたから、友哉は俺を相当な怖がりだと思っている。俺がわざと指先をカタカタと震わせると、友哉は慰めるように優しく撫でてくれた。  ハルが羨ましそうな目で友哉の手を見ている。 「怖いだろうけど教えて欲しい。何があったのか、話せるか」 「うん……。俺ね、今朝、大賀見英司という人の家に行ったんだ。昨日の公園での襲撃を依頼したのがその人だと分かって、もうこんなことはやめて欲しいからちゃんと話し合おうと思って……」  ハルは『嘘ばかりつくな』とでも言いたそうにシラケた目を向けてくる。  まぁ確かに話し合いなんてする気はさらさらなかった。俺は英司を脅しに行ったんだ。  俺が『余計なこと言うなよ』と瞳で語ると、『嘘つきのケダモノめ』とハルが瞳で返事をしてくる。パチパチと火花が散りそうな俺達の間で、目の見えない友哉は俺のシャツをぐいっとつかんできた。 「あきら、そんな奴の家にひとりで行ったのか? どうして俺や雪彦さんと一緒に行かなかったんだ」 「ごめん……。全部、俺が狐のあやかしの血を引いているせいだと思って……」 「あきらは何も悪くないだろ。あやかしの血を引いているからっていうだけで、襲う方がおかしいんだ。どうしてそんな危ない奴の所に一人で行ったんだ」 「うん、ごめんなさい。心配すると思って」
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