6-(7) 食べられた18箇所

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6-(7) 食べられた18箇所

「もう、危ないことをするなよ」 「うん……もうしない」  優しい友哉と、その優しさに付け込んで甘える俺。  抱きあう俺達を苦々しい目で見ながら、ハルはイラついた声をぶつけて来た。 「で? 死んでいたのは大賀見英司ひとりか? どんな状態だった?」 「俺が見た死体はひとりだけだったよ。左側のお腹とお尻が無くなっていた」 「無くなっていた?」 「うん、食べられちゃったみたいに」  ハルが眉をしかめる。 「大賀見英司の息子、大賀見誠司も遺体から太もも部分が無くなったとか言っていなかったか?」 「あ……そういえば雪彦おじさんがそんなことを言っていたね。じゃぁ、それも同一犯? その時から今回の大量殺人が始まっていたってこと?」 「もっと詳しい情報が欲しいな」 「おじさんが戻ってくれば、何かしらの情報を持ってくると思うけど」  友哉にはあまり残酷な話を聞かせたくなかったけど、仕方がない。友哉は不安そうな顔で俺の腕をつかんでいる。 「なぁ、あきらも大賀見家の血を引いているんだよな」 「うん」 「もし犯人が大賀見家に恨みを持っているなら、あきらも危ないんじゃ……」  俺もハルもちょっと驚いて瞬いた。 「友哉って、ホントぶれないよね」 「ぶれ……? 何が?」 「だって、いっつも俺を心配してくれる」 「親友を心配するのは当たり前だろ」 「そうだけど、心配しすぎだよ」  そう言いながら、俺の口元はニマニマとゆるんでしまう。 「この化け物をどうにか出来るのは、それ以上の化け物だけだぞ」  ハルが凍るような声で言うと、友哉はハルのいる方角にぐんと顔を向けた。 「あきらを化け物呼ばわりしないでください」 「倉橋友哉、その首の傷は誰に噛まれたものだ」  友哉は自分の首を押さえて嫌そうな顔をした。 「そう仕向けたのはあなたでしょう? あきらがあの後、取り乱してずっと泣き通しだったのも知っていますよね?」 「あれはただの揺り戻しだ。久豆葉あきらの本質は狡猾で執念深い狐なのだぞ」 「狡猾で執念深い? 狐なんてシッポがモフモフで可愛い動物じゃないですか」  友哉は小型犬を撫でるような仕草をしてみせる。 「分かっていないな、倉橋友哉。狐のあやかしは可愛いなどと形容できるものでは無いのだぞ」  ハルは脅すように低い声で話し出す。
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