6-(7) 食べられた18箇所

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 ベッドの横の台にすっかり冷めた病院食が残っている。典孝の騒ぎの後始末で、病院のスタッフがまだ食器の回収に来られないらしい。おそらく入り口から廊下まで典孝の血でかなり汚れただろうし、大きい事件だから警察への対応もあるんだろう。 「友哉、朝御飯の途中だったんだよね。これは……うーん、バタバタして埃かぶっちゃってまずそうだし、作り直してもらう?」  友哉はゆっくり首を振った。 「食欲無いや」 「あ、そうだよね。ごめん」  さっきまで体を食べたとか食べられたとかいう話をしていて、食欲が湧くはずもない。 「友哉、隣座っていい?」 「いいよ」  朝食のためにベッドの背もたれは起き上がっている。友哉は広いベッドの左側へ体をずらした。俺は靴を脱いでベッドに上がり、友哉の隣にくっついて座った。 「すごい事件が起こってるみたいだけど、あんまり現実感ないね」  病室内とその周りをゆっくり警戒している琥珀と翠玉、大雅を眺める。 「あきら……大丈夫か」 「大丈夫じゃなさそうなのは友哉の方じゃん」 「俺は平気だ。でも、あきらのお母さんが」 「まだそうと決まったわけじゃないよ。俺のお母さんは狐のあやかしなんだから、殺されても死なないかも知れないじゃん。なんかすごい妖術とか使って、案外図太く生き延びているかもよ」 「すごい妖術ってなんだよ……」 「きっとねー、復活の呪文とかで蘇るんだよ」 「ドラゴンハンターの賢者みたいにかよ」 「そうそう、あの何でもできる賢者みたいに」 「はは、そうだといいな」  友哉は少し悲しそうに笑った。 「ね、友哉。あのおまじないしてくれる? 悪夢を見た時のやつ」 「ああ……もちろん」 「やった」 「じゃ、目を閉じて」  友哉は手探りで俺のおでこに触れて来た。温かい指の感触がくすぐったい。 「バクさん、バクさん、悪い夢を食べてください」  友哉は俺の眉間をトントントンと三度叩いた。  俺はくすくすと笑い声を出す。 「やっぱこれ、効き目あるー」 「そうか」 「友哉にもやってあげようか」  いつもの友哉なら『俺はいいよ』と恥ずかしがるはずだけど、今は素直にこくりとうなずいた。 「お願い……しようかな」
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