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「では、目をつむってください」
「うん」
素直に目を閉じた友哉の顔色は悪かった。
俺は友哉の眉間に指を置いた。
「バクさん、バクさん、悪い夢を食べてください」
と言って、トントントンと軽く三度叩く。
くくくっと友哉が笑いだす。
「ほんとだ。効き目あるな」
「でしょ」
友哉は目を閉じたまま、ふーっと息を吐いた。
「眠い? ベッドを倒そうか?」
「いや……。なぁ、あきら」
「なにー」
「今度、あのテーマパークに行こうか。ずっと行きたいって言っていただろ?」
「どしたの、急に」
「せっかく境界線を出られたのに、俺達、どこにも遊びに行ってないなと思って……」
「確かに! テーマパーク、いいねー。せっかく行くなら、どこにも行けなかった十年分楽しまなくちゃね」
「ああ。じゃぁ、今俺達のまわりで起こっている怖いことが全部解決したら、みんなを誘って遊びに行こうな……」
「みんな?」
「うん……。御子神と吉野部長と……あと雪彦さんと……それからハルさんも……? 大勢でわいわい行きたいよな……」
ことん、と友哉の頭が俺の肩に寄り掛かって来た。
きっと、俺を元気づけようとして遊びに行こうなんて言い出したんだと思う。でも、『この危機を乗り切ったら〇〇へ行こう』なんて、いかにも何か起きそうな定番のフラグだ。
「友哉」
「……んー……」
今にも寝落ちしそうな様子で、友哉が生返事をする。
「絶対に行こうね。絶対に連れて行ってあげるからね」
友哉はもう返事をしなかった。
横から静かな寝息が聞こえて来た。
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