7-(1) 約束

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「やっ、いたい! いたいよー!」  あきらの足に赤い血が出て来て、その体がずずっと10センチくらい後ろへずれた。 「やだー! いたい、はなしてー!」  また、ずず、ずず、と引っ張られるようにあきらの体が動く。 「あきら!」  俺は何も考えずに飛び出してあきらの体に抱きついた。  がぶりと何かが俺の腕を噛んでくる。 「うわっ!」  痛みで手を離すと、またあきらが引きずられる。 「ともやぁ……!」 「あきら!」  もう一度飛びつく。また噛まれる。それでも俺があきらを離さないと、今度は俺の体ごと何かが後ろへ引っ張って行く。 「だめー! だれかたすけてー! たすけてー!」  叫んでも、公園には誰もいない。  どうしよう、どうしよう。  怖くて、恐ろしくて、涙が出て来た。 「だ、だれかぁー、たすけてー……!」 ―― この子を助けたいの?  急に女の人の声が聞こえて、俺はきょろきょろ首をまわした。 ―― 助けるための力が欲しいの?  幼稚園で俺に手招きした女の人がすぐ目の前に立っていた。 「たすけて。ば、ばけものが」  女の人がふっと微笑んで、あきらを指差した。 ―― この子を守りたい?  あきらはなぜか時間が止まったみたいに固まって宙を見ていた。  俺は女の人に必死で助けを求めた。 「おねがいです、たすけてください」 ―― 助けて、じゃないでしょう。何でもかんでも大人を頼っちゃいけないわ。 「え……」 ―― あなたがこの子を助けたいかどうか、守りたいかどうかを聞いているのよ。 「え、えと……たすけて……」 ―― 助けるのは私じゃないわ。あなたが助けるか、助けないかなのよ。  俺の両目からぽろぽろと涙が零れてきた。こんなに怖いことが起きているのに、この大人はどうして助けてくれないんだろうと思っていた。 ―― 守りたくないならいいわ。この子はきっと食べられちゃうけど。 「ダメ、あきらをたべちゃダメぇ」 ―― じゃぁ守ると言いなさい。あなたが助けると言いなさい。 「ううー」 ―― 泣いていても食べられるだけよ。 「た……たすける。おれがあきらをまもる」  俺は両手でぎゅっとあきらの体を抱きしめた。 ―― そう、じゃぁこの子が大人になるまでの間、あなたにこの子を守らせてあげてもいいわ。その代わり……  女の人は俺に顔を近づけて来た。 ―― あなたの『   』をちょうだい。 「え」
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