7-(3) 清らかなお人形さん

11/12
前へ
/370ページ
次へ
「ああ、もしかして」  いたずらっぽい目つきをして、友哉に取り憑いたそいつが俺にしなだれかかって来る。 「あきらちゃん、この子を性処理に使っていたの?」 「は……?」  ぞわりと全身を寒気が走った。  何を勘違いしたのか、そいつはケタケタといやらしく笑った。 「なぁに? そういうこと? 男の子の体ってそんなにいいものなわけ? あきらちゃんならどんな美女でも自由にできるでしょうに、この子の体ってそんなに具合がいいのかしら?」  いやらしく唇を舐めて、そいつはガウンをはだけて友哉の肌をさらした。 「そんなにしたいなら、してあげてもいいわよ」 「な、にを……」 「きっとこんなガキよりも、私の方があきらちゃんを気持ちよくさせてあげられる」  目と伏せて唇を寄せてくるそいつを、俺は突き放した。  ひどい吐き気がした。  ああ、この女は魔物なのだと、はっきりと分かった。  こいつは自分の息子と交わることに何の抵抗も感じていない。  人の倫理が通じない別の生き物なんだ。 「これ以上友哉を汚すな、化け物が」  そいつの目が驚いたように見開かれた。 「何が不満なの? あなたは妖狐の力も狼の力も使えるのよ。やっと三乃峰の土地も取り返したんだから、私達はこれからじゃないの」 「これからって、いったいこれから何がしたいの」 「何でもできるわ。楽しいこといっぱい」  俺は首を振った。 「友哉がいなくちゃ、何も楽しくない」 「何を言っているの。楽しくなるわよ。まずは若くて綺麗な処女を集めて毎日食べるの。そうして妖力を蓄えて、早く本来の体を取り戻したいわ。覚えているでしょう? 私の美貌。あきらちゃんが望むなら、本来の姿で抱いてあげてもいいのよ」  人を食べることも息子と交わることも当然のこととして言われ、どうしてハルがあれほど妖狐を恐れていたのか理解した。  ハルの言う通りに、こいつはモフモフシッポの可愛い動物なんかじゃない。こいつはどこまでも人と相容れない化け物なんだ。  俺は半分妖狐だけれど、ずっと友哉と共にいて、友哉と共に育ってきた。友哉が何を見て何を感じて何をどう考えるのか、友哉の生きる世界を共有して育ってきた。  俺は人だ。友哉がそばにいる限り、俺は人だ。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加