7-(4) 呪いを終わらせる

1/9
前へ
/370ページ
次へ

7-(4) 呪いを終わらせる

 気付くと床が目の前に迫っていて、自分がどこにいるのか何をしていたのか一瞬分からなくなった。  多分、気絶しかけたんだと思う。 「うそ……」  全然力が入らなくて、床に這いつくばったままで呟くと、上から呆れかえった声が聞こえた。 「何をやっているの、あきらちゃん?」  俺は震える手を床について、必死に顔を持ち上げた。 「嘘だ…………」  呼吸がまともに出来なくて、ハッハッと浅くなっていく。 「ええ、なぁにぃ? まさかショックで倒れたの? あははは、本当にぃ? ええと、こういうの今は何て言うんだっけ? そうそうウケル、ウーケールー」  そいつは友哉の体を使って、絶対に友哉がしないような顔で爆笑した。  俺の両目からボロボロと涙が溢れてくる。 「うそ、だ……」  痛いくらいに心臓が打って、耳の中までどくんどくんと鼓動が鳴り響く。 「嘘じゃないわ。本当なのよ、あきらちゃん。あなたのお友達はもうこの世にいない。私が十年前の約束通りに食べちゃったの」  ガクガクと腕が震えて、俺はまた床に這いつくばった。 「友哉……」  強い眩暈がして床がぐにゃりと歪んで見えて、少しずつ視界が暗くなっていく。  友哉が俺より早く死ぬのは確実だった。  雪華もそう言っていたし、俺もそうだろうなと思っていた。  友哉はずっと俺を守り続けて魂まで傷付いていたし、俺は人より寿命が長いあやかしの血を引いていた。  友哉が先に死んだらどうするのかと聞かれた時、俺はなんて答えたっけ?  そうだ、世界を滅ぼすとかなんとか、そんなことを言ったんだった。  でも、無理だ。  俺は友哉が死ぬということの意味を、本当には分かっていなかった。  世界を滅ぼすとか、手当たり次第に殺しまくるとか、そんなことをするのは無理だったんだ。  だって体に力が入らない……。  まともに立つことも出来ない……。
/370ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加