7-(4) 呪いを終わらせる

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「ええ、なんか言った?」  友哉に取り憑いたそいつが、ソファから降りて俺の前に屈んだ。  大好きな友哉の顔が目の前にあって、俺はまたボロボロと泣き崩れた。 「ともやぁ…………おれ、おれ……しんじゃうよぉ……」  俺が子供みたいに甘えた声を出せば、友哉は絶対に抱きしめてくれたのに。 「ともやぁ……」  中身が違うと分かっていても、俺は最後に友哉の顔を見つめた。 「俺はもう……息をするのをやめるね……鼓動を打つのもやめる……俺、もう生きるのをやめるよ。友哉……」 「あきらちゃん?」 「友哉、大好き、さよなら」 ―――― どくん。 「あ」  友哉の体がぐらりと揺れた。  友哉の口が大きく開いて、びっくりしたみたいに尻もちをついた。 「あきら……? おい何だよ、さよならって! 何があった?!」  友哉の口から、友哉の声が聞こえた。 『何よ今の! 何をしたのよ! ちょっとどういうこと!』  友哉の背後で黒髪の女が叫んだ。  俺は大きく息を吸った。  俺の胸がドキドキと力強く鳴り始めた。 「と、とも、ともや、あぐっ、うっ、ううー……!」  歓喜と嗚咽が一気に溢れ出して、呼吸困難になる。  友哉がびっくりしたように両手を前に出して俺に触って来た。手探りで俺のグチャグチャになった顔を撫でてくる。 「あきら、泣いているのか? どっか痛いのか?」 「ともや、ともやぁ」 「どうしたんだよ、苦しいのか?」 「だ……だい、じょうぶ……」 「ほんとか? どこも何ともないのか?」  友哉の手が俺の体をまさぐってくる。 「うん、だいじょぶ。あ、ははは、くすぐったい、だいじょぶだから」 「大丈夫なのに何で泣くんだよ」 「だってぇー……」 「はは、お前めっちゃ鼻水出てるぞ」  友哉は何か探すように自分の体を触って、眉をしかめる。 「なにこの服。あれ、俺のスマホとハンカチは?」 「友哉ぁ、俺のこと好き?」 「何でいきなりその質問? 好きに決まってんだろ」 「うん、うん、俺も好きぃ、大好きぃ……」 「はいはい、分かったからもう泣き止めって。いったい何があったんだよ」 「うん、えっとね……えっとー……怖い夢見た」 「え、夢? またかよ?」 「うん、また見た」 「はは、泣くほど怖かったのかよ」 「怖かったぁー、死ぬかと思うくらい」 「そっか、目が覚めてよかったな。ええっと、拭くもの無いからこれでいいか」  友哉はガウンの袖口で俺の顔を優しく拭ってくれながら、くすっと笑った。 「ほんと、夢を見て泣くなんて、あきらはいつまでも子供だな」 『はあぁー?』
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