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『いいよ。その分、俺が友哉を想うから』
『ああ、今度はあきらちゃんが直接操るってこと?』
『操ったりしない』
『操るわよ。自分の欲しいものの為ならどんなことでもするのが妖狐だもの』
『そうだね、どんなことでもするよ』
『あきらちゃんは私の血を引いているから』
『うん、妖狐の血を引いているから何でもするよ。でも、お母さんは、俺の欲しいものが何なのか正確には分かっていない。俺が欲しいのは友哉の体じゃない。友哉がくれるきれいな愛情の方なんだ』
お母さんは、ちょっとだけ笑った。
『人間みたいなことを言うのね』
『うーん、どうかな。人間はきっとこんなことしないし』
俺の心がぐんと魔物側へ傾く。
『あら……殺意を隠さないのね』
『ごめんね、お母さん』
『いいえ、謝る必要は無いわ。死ぬのはあなたの方だから』
お母さんはゆらりと揺れて、天井に届くほどの白狐になった。
純白の毛並みはうっすらと発光していて、赤い目玉が澄んでいて吸い込まれそうだ。
『わぁ……。俺のお母さんって、こんなに綺麗な狐だったんだね』
『死ぬ前に見られて良かったわね』
『死ぬ前に聞いてあげる。本当の名前は何て言うの?』
『久豆葉ヨウコよ』
『へぇ、意外』
『ふふ、名前はいくつも持っているの。ミサキ御前っていうのが、最も長く使った名前かな……。でも、やっぱり私は久豆葉ヨウコ、それが一番気に入っている』
『じゃぁ、その名前でお墓作ってあげるよ』
『必要無いわ。死ぬのはあきらの方だから』
笑んだ白狐は美しかった。
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