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7-(5) 嘘の上に成り立つ
子供の頃の夢を見ていた。
あきらと公園で遊ぶ夢。
あきらはブランコに乗って足を蹴り上げ、ぐーんと大きく漕いでいく。
俺も隣のブランコに座って、勢いをつけて大きく揺らした。
競い合うようにブランコを漕いでいると楽しくなってきて、笑い声が出た。つられるようにあきらも笑った。
「やるなー、ともや」
「あきらもなー」
「ともやー、ぶらんこでとべるー?」
「とべるよー」
「じゃあ、どっちがとおくまでとべるかきょーそー!」
「わかったー!」
「せーの、とりゃー!」
「とりゃー!」
ブランコの勢いのままに手を離して前へ飛び出す。ざぁっと風が耳を打ち、一瞬の浮遊感の後、ざすっと両足で降り立つ。
あきらより、俺の方が前にいる。
「やったー、おれのかちー!」
「くっそー、もういっかい!」
「いいよ、もういっかいやろ!」
子供の頃って、どうしていつも大声でしゃべって、どうしていつも全力で走っていたのかな。
俺達は急いでブランコへ駆け戻り、また勢いをつけて大きく漕いでいく。
「いっくよー!」
「わかったー!」
「せーの、とりゃー!」
「とりゃー!」
勝ったり負けたり何度も何度も飛んで、もうブランコを漕げないっていうくらいにへとへとになるまで夢中で遊んだ。
地べたに座り込んで、あきらが空を見上げる。
白い肌がうっすらと紅潮して、こめかみから耳の前を通って、陽に光る汗が首へと伝い落ちていく。
少しの間見惚れていると、あきらがパッと俺の方を向いた。
「ともやのおうちは、ここのちかくなの?」
「う、うん、きんじょだよ。あきらは?」
「おれ、ひっこしてきたんだー」
「ほんとう? じゃぁ、あしたからもあそべる?」
「あそべるよー」
「やった! やくそくだよ」
「うん、やくそくー!」
空は晴れていて風は穏やかで、俺達は笑い声をあげる。
痛いことも怖いことも起こらない。
ありふれた子供の、ありふれたひと時の夢。
「あしたもいっしょにあそぼうね」
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