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「……ごめん、大きな声出して。嫌な思いをしたのはあきらなのに」
「ううん」
「あきらは平気だったのか? 父さんと母さんに会って」
「今日は短い時間だったし、二人とも少しも変じゃなかったよ。でも……やっぱり、一緒に暮らすのは無理かな」
「そうだよな」
「うん、おじちゃんもおばちゃんも優しい人だけど、狐の力の影響を受けやすいみたいだから」
親のことをこれ以上話したくなくて、俺は話題を変えた。
「さっき、拝み屋さんがお祓いしたとかなんとかって言っていたのは、何の話なんだ?」
ベッドがきしっと小さく軋んで右側からほんの少し振動が伝わる。あきらがベッドに腰かけたらしい。
「今日のお昼頃ね、大賀見家の当主が、本家の中で意識不明の状態で発見されたんだって」
さらりと重い話をされて、俺はポカンと口を開けてしまった。
「当主って、あきらの」
「うん、俺の父親」
父親が意識不明だというのに、あきらはまったく平然と答えた。
「いっぱい人が死んで、警察が捜査に来て、マスコミにも騒がれて、今朝から色々あったでしょう? 大賀見家の親族はみーんなパニックになっちゃったらしくてさ。どの家も家長が死んでいるから一族を取りまとめる人がいなくって、で、当主代理みたいなことをするために雪彦おじさんが本家に呼ばれちゃったんだ」
「当主代理って、何をするんだ?」
「警察対応とマスコミ対応と、あと一番大変そうなのが相続問題。わがままな一族をまとめるには狼持ちじゃないと無理なんだって」
「あきらは行かなくていいのか?」
「俺が行くと、ややこしいことになっちゃうからね。ほら、俺は認知もされていない子供なんだし」
「そんな……せめて父親のお見舞いくらいは」
「もともと会ったことも無い父親だから、俺は別にいいんだけど」
「でも、父親が意識不明なのに会いに行けないなんて、そんなのおかしいだろ。やっぱり本家の奥様が妨害してくるのか?」
「う、ううん」
少し口ごもってから、あきらは言いにくそうに声を出した。
「当主の奥さんも子供も、遺体で発見されたんだ」
「は……?」
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