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「大賀見家の本家は明治に建てられた洋館らしいんだけどね、そのサンルームを改造したお風呂場で当主が倒れているのを見つけたのが、ハルなんだ」
「拝み屋さんが?」
「うん、化け物の気配をたどって本家に行きついたんだって」
「すごいな」
公園であきらを襲撃してきたのに、その翌日には俺に交際を申し込んできたりして、相当に変わった人だと思ったけれど、拝み屋の実力は本物みたいだ。
「本家では少し前から通いの家政婦さんも庭師さんも全部断っていたらしくて、家族以外は誰もいなかったはずなんだけど、なぜか洋館の中はたくさん人がいたような形跡が残っていたんだって。でも、当主と一緒に住んでいるはずの妻子が見つからなくて、敷地内を捜索したら……大きな庭を隔てたところに和室の離れがあって、そこでミイラ化した遺体が発見されたみたい」
「ミイラ……」
こくっとつばを飲み込む。
「どうして」
「何年も前に死んだものらしいけど、死因はよく分からないらしいよ」
次々と思ってもみないことを言われて、頭が混乱してくる。
「待って。じゃぁ、あきらを殺すように雪彦さんに命じたのは誰なんだ?」
「偽物だったみたい。っていうか、化け物だったらしいよ」
「化け物」
「ハルが言うには、ミサキ御前っていう狐だったんだって」
「狐……。あきらと関係があるのか」
「ううん。ぜっんぜん関係ない。俺が生まれる何百年も前にここら辺一帯を支配していた妖狐らしいけど。狼の力で追い出されたことで大賀見家を恨んで、数百年越しに復讐に来たんだって」
数百年前からの妖狐の恨みなどと言われても、旧家の跡継ぎ問題と言われた時よりもさらに俺の理解の範疇を超えてしまう。
「なんだか途方も無い話になって来たな」
「作り話みたいだよね」
「でもどうして何の関係もないあきらが狙われ続けたんだ?」
「ミサキ御前にとっては、俺も大賀見家の血を引く者だし、同じく敵だと思われたんじゃない?」
「そんな」
「わけわかんないけど、ミサキ御前も大賀見家の分家の家長だった人達も、みんな死んじゃって、詳しいことは分からないらしいよ」
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