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さっきと同じ高級外車の後部座席に並んで座ると、ハルに促されて友哉が話し出した。
「ええと、まず言っておくと高校に入学した頃は俺とあきらの身長はほとんど変わらなかったんです。目線もちょうど同じくらいで」
「それがまず言っておくこと?」
「重要だろ?」
「ええー?」
「なんだよ」
「あの頃から俺が高かったよー」
「たった2、3センチだろ! あの頃の俺は絶対あきらより大きくなると信じていたんだけどなぁ」
「あはは、まぁ俺も自分がこんなに大きくなるとは思ってなかったかも」
こんなに身長差が大きくなったのは、友哉の成長があの時点で止まってしまったせいだ。
「だろ? 俺も思わなかった。あの『甘えた』のあきらがこんなに大きくなるなんて」
「えー、俺、甘えただった?」
「今だって『甘えた』だろ? 体がどんなに成長しても、中身はあんま変わらないし」
「うーん、まぁ反論は出来ないかも」
「あはは、認めるようになったってことは、ちょっとは大人になったかもな」
これから高校時代の話をする……つまり自分が失明した頃の話をするというのに、友哉の声は気楽で明るかった。
「あきらと俺は家が5分ぐらいの近所だったから、小っちゃい時からずっと一緒だったんです」
「幼馴染なのか」
「そうだよー。小・中・高って同じだったし、クラスが別れても行き帰りは絶対一緒に歩いたよね」
「あきらは帰り道とか、いっつも棒切れ持って俺のちょっと前を歩いてさ。ドラゴンハンターの真似とかしてたよな」
「ドラゴンハンター! なつかしいー。ゲームもアニメも大好きだった!」
「うん、俺も。新作発売されるとクリアするまで毎日夢中でやったよな」
「でも友哉は毎日、宿題終わるまでだめだって、なんか厳しかった」
「そりゃそうだよ。成績落ちると塾へ行けって言われるかも知れないだろ。そしたら一緒に遊べなくなるからな」
「うちは塾に行く余裕なかったしねー。そっか、じゃぁ俺の為だったんだ」
「うん、一緒に冒険したかったから」
「楽しかったよねー、あれ。ドラゴンハンター今日もゆく!ってやつ」
「目指すは遥か竜の城!」
「「速度は全速、いざ参る!」」
声を合わせて言って、俺達はくすくす笑う。
ハルが座席の間から、笑う友哉を愛しそうに見ていた。
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