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「本当に?」
父さんと母さんが微笑んでうなずく。
「ああ。あきら君さえ良ければ、うちの子になってもらえないかと思っているんだ。あきら君の今の保護者には、以前それとなく話したことがあるんだが、あまりいい顔はしていなかった。だから、もしかしたら正式な養子縁組は難しいかも知れない。でもせめて、ここで一緒に暮らしてもらって生活と学費の援助をさせてもらいたいと思っているんだ」
「そう、友哉と兄弟として過ごさせてやりたいのよ」
あきらと俺が兄弟になる?
あきらと一緒にここで暮らせる?
あきらと一緒に大学へ行ける?
それはすごく嬉しいし、すごく楽しそうだ。
父さんが俺の目を覗き込んでくる。
「賛成か?」
「もちろん!」
「そうか、じゃぁさっそく次の休日にでもあきら君の保護者に……」
「あ、でも」
「でも?」
「兄弟ってさ、もちろん俺が兄だよね」
「え?」
父さんと母さんがきょとんと俺を見る。
「だから兄と弟なら、俺が兄だよねって」
「気になるのはそこなの?」
「そうだよ! それ、すっごく重要なことだから!」
父さんと母さんが顔を見合わせ、噴き出した。
「まぁ、友哉……」
「友哉、お前も大人びているようで、やっぱりまだまだ子供だな」
くすくすと笑いながら、ほほえましいものを見るような目で見られる。
「ええ、だって、あの甘えたのあきらが兄ってことはないだろ……」
言うとさらに笑われる。
笑われてしまうと、なんだか恥ずかしくなってくる。
顔が熱くなってきて、俺はごまかすように、ずずずず、と下品な音を立てて味噌汁を飲んだ。
「もしもあきら君がうちに来てくれたら、『倉橋あきら』になるのね」
「気が早いな、母さん」
明日にでもあきらの意思を確認してくれと父さんに言われ、あきらを迎え入れるために二階にある父さんの書斎(という名の物置)を片付けようと母さんが言い出し、まだ何も決まっていないのに俺達家族はワイワイとこれからについて話し合っていた。
そこへ突然、やたらハイテンションなゲーム音楽が鳴り響く。俺達はびっくりしてキョロキョロと周りを見た。
「あ! ごめん、俺のスマホだ」
高校入学のお祝いとして買ってもらったばかりだけど、あきらがスマートフォンを持っていないこともあって、俺も今までほとんど使っていなかった。
充電器に差しっぱなしのそれを手に取り、画面に『久豆葉早苗』という文字が表示されているのを見て俺はぎくりと肩を揺らした。
久豆葉というのはあきらの苗字だ。
「どうしたの? 誰から?」
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