1-(2) 兄弟みたいに

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 ああ、俺は本当にバカだった。  人間っていうものはどんなに異常な出来事でも、何度も続けば慣れてしまう。俺はどこかで、この恐怖と痛みに慣れてしまっていたんだ。異常が続く毎日が日常になってしまって、俺はすっかり油断してしまっていた。定期的に『あれ』に襲われることを当たり前のように受け入れてしまっていたんだ。  『あれ』を分かった気でいたなんて、本当に愚かすぎる。  襲ってくる前には、必ずあきらが先に気配に気付くものだと。一度襲ってきたら、次まで数日は期間があくものだと。襲われても大怪我することはないし、ましてや命にかかわることなんて無いものだと……。  それは全部思い込みでしかなかったのに。  今まで大丈夫だったからといってこれからも大丈夫だなんて保証はどこにも無かったのに、俺は今までの経験則がそのまま通用するものだとお気楽にも思い込んでしまっていたんだ。 「うう、ともやぁ……」 「大丈夫、大丈夫だから……!」  俺達はこの理不尽な不幸に慣れるべきじゃなかった。  もっと真剣に考えなくちゃいけなかった。  こんなものを受け入れていちゃいけなかったんだ。  ぐったりしてきたあきらを片腕で抱き寄せて、見えない何かを追い払うようにバシバシと空気を叩き続ける。  振り回す腕に力が入らなくなってきた頃、不規則に瞬いていた蛍光灯が突然ふっと明るくなった。あきらと俺にまとわりついていたゆらゆらとした何かも、もう見えない。  遠くにタタタッと走り去るような音が聞こえた気がして、俺はあきらを抱いたまま、深く重い息を吐いてその場にずるずると崩れ落ちた。
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