1-(3) 狭い世界

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「いつまでもこのままじゃだめだよな。何とかしないと」 「うん……。でも、俺達みたいなただの人間(・・・・・)に『あれ』を何とかできるのかな……」  不安なのか、あきらは膝の上で拳を強く握りしめている。 「あきら」  俺はベッドから降りてあきらの隣に座った。そして、不安も恐れも感じていないような表情を作って、あきらの震える手を上から包んだ。 「俺達、もう高校生になったよな」 「え、うん」 「高校生ってさ、もうかなり大人だと思わないか?」  あきらの目がハッと見開かれる。 「う、うん、思う」 「今までは『あれ』のことを大人に言っても、いつもまともに取り合ってもらえなかっただろ。だから、俺達はどこかで諦めてしまっていたんだと思う。大人が助けてくれないと、子供の俺達にはどうにもできないって。大人が信じてくれないと、何もできないって……。でも、もう俺達自身が大人だろ?」 「うん、うん、そうだよ」  あきらの顔が目に見えて生気を取り戻す。  キラキラと輝きだした目がすごく綺麗で、女子に騒がれる理由が分かる気がした。 「大人ってのは自分の頭で考えて、自分で行動するものだと俺は思う」 「自分で考えて、自分で動く」  噛みしめるようにあきらが呟く。 「まずは考えよう。俺達に出来ること」 「分かった、まずは考える」 「ああ、絶対に一緒にここを出よう」  こぶし同士をコツンと合わせる。指をぐっと握りあって、パチンと手を合わせる。  コツン、グッ、パチン、友情の証。  俺達はくすっと笑いあった。  あきらがつらそうな顔をすると、もともと狭い俺の世界がどんどん狭くなっていく気がしてしまう。  だからこうやってあきらが笑うだけで、俺の世界は広くなるんだ。  ひとりじゃなくて良かった。  あきらのそばにいられて良かった。  俺はまた心からそう思った。
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