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「いつまでもこのままじゃだめだよな。何とかしないと」
「うん……。でも、俺達みたいなただの人間に『あれ』を何とかできるのかな……」
不安なのか、あきらは膝の上で拳を強く握りしめている。
「あきら」
俺はベッドから降りてあきらの隣に座った。そして、不安も恐れも感じていないような表情を作って、あきらの震える手を上から包んだ。
「俺達、もう高校生になったよな」
「え、うん」
「高校生ってさ、もうかなり大人だと思わないか?」
あきらの目がハッと見開かれる。
「う、うん、思う」
「今までは『あれ』のことを大人に言っても、いつもまともに取り合ってもらえなかっただろ。だから、俺達はどこかで諦めてしまっていたんだと思う。大人が助けてくれないと、子供の俺達にはどうにもできないって。大人が信じてくれないと、何もできないって……。でも、もう俺達自身が大人だろ?」
「うん、うん、そうだよ」
あきらの顔が目に見えて生気を取り戻す。
キラキラと輝きだした目がすごく綺麗で、女子に騒がれる理由が分かる気がした。
「大人ってのは自分の頭で考えて、自分で行動するものだと俺は思う」
「自分で考えて、自分で動く」
噛みしめるようにあきらが呟く。
「まずは考えよう。俺達に出来ること」
「分かった、まずは考える」
「ああ、絶対に一緒にここを出よう」
こぶし同士をコツンと合わせる。指をぐっと握りあって、パチンと手を合わせる。
コツン、グッ、パチン、友情の証。
俺達はくすっと笑いあった。
あきらがつらそうな顔をすると、もともと狭い俺の世界がどんどん狭くなっていく気がしてしまう。
だからこうやってあきらが笑うだけで、俺の世界は広くなるんだ。
ひとりじゃなくて良かった。
あきらのそばにいられて良かった。
俺はまた心からそう思った。
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