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「うおー、ふかふかだー」
手足をバタバタさせるあきらを見て、俺もベッドの端に腰を下ろした。
「あきら、明日も学校休みだし、夜にいっぱいゲームできるな」
「ほんと? 夜にゲームしていいの?」
「勉強終わったら、あとは自由時間だろ」
「そっかー、で、なにやる?」
「ふっふっふ、ドラゴンハンターのⅢを買ってある」
「うっわ、マジ最高! じゃぁさじゃあさ、今夜は徹夜にチャレンジしてみていい?」
「あきらには無理だろ。すぐ寝るくせに」
「いいじゃん、もしも寝ちゃっても、明日もずーっとここにいれるんだし」
「確かにな。じゃぁ、せっかくだから、こっちの部屋の新しいテレビにプレグラつなごうか」
「いいねー、大画面」
「あ、それと、もしプレグラが欲しかったらあきら用にも同じの買ってもらうか? 」
「ううん、どうせ一緒に遊ぶんだし一台あればいいよ。コントローラーはふたつあるし」
「そりゃそうか。よっし、じゃぁ、今日は夜中にこっそり何か食べながらやろう」
「夜中に?」
「ああ、夜食にサンドイッチでも作るよ」
「すげー。俺、夜中にゲームをするのも夜食を食べるのも初めてだ。楽しみ過ぎる」
あきらは少し興奮しているのか、新しい枕をぎゅうぎゅう抱きしめている。
今まで何度も俺の部屋に泊まったことがあるけれど、いつも迫りくる『あれ』の気配に怯えていて遊ぶどころじゃなかったからだ。
「あきらってさ、なんか普通に素直だよな」
「なんだよそれ」
「だって、ドラマとかでこういうシチュエーションだとさ、なんつうか、ちょっと思春期こじらせた感じに拗ねたりするじゃん」
「あー、はいはい。あれだろ、同情するんじゃねーよ! とか?」
「そうそう、俺のことなんかほっとけよ! とか」
「あはは、それすっごく青春ドラマっぽい!」
「青春ドラマみたいな展開じゃん。友達と兄弟になるなんて」
「はは、言えてる」
あきらはポスポスと軽く枕を叩いて、元の位置に戻した。
「ん-でもさ、今さらじゃん。俺はもう十年以上もおばちゃんとおじちゃんのお世話になってるし、友哉のことはよーく知ってるし、俺のこともよーく知られすぎてて、こじれる余地がないっつーか」
「まぁな。今までだって兄弟みたいな感じだったもんな」
「そういうこと、ま、俺がお兄ちゃんだけど」
「まだ言うか」
何だか無性に笑いが込み上げてきて、俺とあきらは馬鹿みたいに笑いあった。
体中に巻かれた包帯が無ければ、普通の、一般的な、何の問題も無い高校生みたいだなと、頭の片隅で思っていた。
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