1-(6) 道切りの蛇

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「違う違う、違います! それを撮ったのはあくまで偶然です! オカ研の活動として、変わった道切りを調べていて、たまたまあなた達を見かけたんです」 「ミチキリ?」  どこかで聞いたような言葉に首を傾げたその時、授業開始5分前の予鈴が鳴り響いた。 「えー、もう昼休み終わり?」 「やばいな、急いで手当てするぞ」  俺があきらの腕をつかむと、あきらがそっと俺の手をはずした。 「待って、友哉」 「なんだ?」 「今日はもう……さぼっちゃってもいいんじゃないかなぁ」 「あきら?」 「……だって、今から授業なんて地獄じゃん」  あきらは悲しそうな顔をして、がっくりとうなだれる。 「俺、めちゃくちゃおなかすいちゃったよぉ……」 「う……」  弱々しく哀れな声を出されてしまうと、俺はもう強く言えなくなる。あきらはそれをよく分かっていた。 「ま、まぁ確かに、お弁当ぶちまけちゃったもんな」 「うん。食べ始めたばかりだったのにー」  後で、散らかしてしまった中庭の後片付けもしないといけない。  俺は大きな溜息を吐いた。 「分かった。じゃぁ、家に帰るか」 「うん」 「途中でコンビニ寄るか? それとも帰ってから何か軽く作っ……」 「倉橋君、久豆葉君、今ならオカ研に入るだけで、こんなものをプレゼントしちゃうんですが」  立ち上がって棚をごそごそしていた吉野が、カップ麺を取り出してあきらの目の前にぽんと置いた。  反射のように、あきらがパシッとそれをつかむ。 「入ります!」 「おい、あきら」 「いいじゃん。吉野さんって良い人そうだし、オカルト研究部って『あれ』の攻略にも役立ちそうだし、けっして食べ物につられたわけでは」 「でも食べますよね?」 「はい食べます!」 「あきら!」 「倉橋君のもありますよ」 「いやそういう問題じゃ……」 「大丈夫、電気ポットも天然水のペットボトルも常備してありますから」 「すごい! オカ研最高!」 「そうでしょう、最高でしょう?」 「お前ら……」 「オカ研に入ろうよ、友哉。そしたらまた『あれ』が来た時、すぐにここに逃げ込めるし」  あきらは床から入部届を拾い上げ、ワクワクした顔で俺の方に寄越してきた。  あきらと吉野が意気投合してしまうと、俺は降伏するしかなくなる。 「分かった……。あきらが入りたいなら、オカルト研究部に入るよ」 「やったぁ!」 「大歓迎です!」  吉野がお湯を沸かしてカップ麺の準備をしている内に、俺とあきらは簡単に傷の手当てを済ませて入部届に名前を記入した。 「部活やるのなんて初めてだー、なんかワクワクするかも」 「そうだな」  不安が無いわけじゃないが、あきらが笑うと俺もつられて笑ってしまう。 
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