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俺は吉野を振り返った。
「すまない、吉野。地図は明日持ってくるから」
「あ、待って下さい。せめて友達登録だけ。スクショでこっちの地図をとって送ります」
「スクショ?」
「ええと、とりあえずこの画像を倉橋君のスマホに送るので」
「分かった」
俺は吉野に教えられながらリンリンのアプリを入れて、友達登録をする。吉野が自分のスマートフォンを操作すると、俺のそれがピコンと鳴って画像が送られてきた。
「サンキュ。あっちの地図と照らし合わせてみるよ」
「はい、結果を教えてください」
「カップ麺、うまかった。ご馳走様」
「どういたしまして」
俺とあきらは吉野に見送られて部室を出た。
中庭に行くと、散らかしたはずの弁当はすでに片付けられていた。
教室に戻り、カバンの中の地図を出して見比べてみると、俺達が調べた『あれ』の境界線と、吉野が調べていた道切りの蛇の位置は、ぴったりと重なっていた。
あきらの顔色がますます蒼くなってきたので、教師に早退することを告げて、女子生徒に囲まれない内に急いで帰路につく。
家に帰りつくまで、あきらはずっと俺の制服の袖をつかんでいた。
無意識のようだったので、俺はからかったりせずにそのままにさせていた。
うつむくあきらの歩調に合わせて、ゆっくりゆっくり歩いていく。
あきらがひとりじゃなくて良かった。
俺がそばにいられて良かった。
また、心からそう思いながら。
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