ゆめうつつ

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あの日、俺は死んだ。 交通事故だった。 人の多く通る交差点。信号が青になって、横断歩道を渡っていた時、飲酒運転の車が突っ込んできた。 俺を含め、何人かが車に跳ねられた。 車とぶつかった衝撃。宙に投げ出された感覚。地面に打ち付けられた痛み。そして、だんだんと体が重くなって、死に向かって行く恐怖。 忘れていた。全て。 「はは、そんなのあり、、?」 悲しい。悔しい。 ─────虚しい。 「くそ、くそ、くそ、、、くっそ、、、、くそぉぉぉ!」 どこにもぶつけようの無い気持ちを吐き出したかった。握りしめた拳を脚にた何度も何度も叩きつける。痛みは感じなかった。 あれはそう、春の日差しが暖かい ──────────10年前の今日だった。
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