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目を覚ました。
いつ帰ってきたのか、いつ意識を飛ばしていたのかは分からない。
多分、夢ではなかった。僕自身があの暖かい空間にいたんだと思う。
ぼうっとしたまま、家を出る。
自分は死んだと自覚した途端、温度も痛みも感じなくなった。空っぽだ。
「いた、」
彼女を見つけた。なぜかはわからない。ただ、体の動くまま進んでいたらいた。
多分、これが最後。
もう、彼女を見ることはないだろう。
「れみ、、」
ポツリと呟く。綺麗で美しく笑う君にピッタリの名前。
僕がいなくなって、悲しみにくれていなくてよかった。笑えているようでよかった。
流石に10年もたっているから当たり前か。
「麗美、そろそろいこうか」
「うん!」
優しく笑う恋人に、夢で見た笑顔で同じように笑う君はとても綺麗で幸せそうで。
君は今幸せなんだと思うと、それだけで胸がいっぱいになった。
もうそろそろ、時間だ。
「ありがとう、麗美」
────大好きでした。
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