用務員小屋で

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 そしてその教え方は独特で、本質を噛み砕いてわかりやすく簡潔に伝える事が出来た。丁寧に教えるのではなくエッセンスを理解させる事に秀でていた。  そしてその結果生まれる時間で教えるのではなく引き出す授業をしていた。  生徒達は気付けば自ら授業に参加している状況になり、先生とのやり取りも多くなる。そんな時の彼女の話し方は対クラスではなく対その生徒になり、リアクションも非常に豊かで生徒に参加している意義や甲斐を感じさせた。  そもそも少子化の影響で教員の採用枠が小さく教師の高齢化が進む中一人だけ若く、加えて美人で楽しい授業をするとなれば当然生徒の間での人気は上がらない筈も無く、そんな彼女に思いを寄せる男子生徒が現れるのは珍しい事では無かったのだ。 「美人だからねぇ、どうかねぇ」 「なんだよチョコちゃん、学校中の情報知ってるのかと思ったら意外とあてにならねぇんだな」  椅子に逆向きに座って背もたれを抱えたまま少年は言った。 「15の子供が色気づいてんじゃないよ。向こうは大人の女性だよ。坊やなんか相手にしないさ」 「そんなんじゃねぇよ!ただ、清瀬先生もそろそろ結婚すべき年齢かなって思っただけだよ」  その通りだ。清瀬先生は確か今年で27、本来なら焦りを感じ始める年齢だろう。
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