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序章
深夜2時過ぎ、卵型スタンドライトの琥珀色のLED電球が、まるで小さな太陽のように、隅々にまで淡くあたたかなひかりを放っているこの部屋で、おれは同じ布団の足もとに潜りこんで葉音のような寝息を立てている愛犬シーズーのシーの存在を感じていた。
おれ自身が人間としてまだ生きつづけている不思議な感覚と、そしてシーが、人間としてではなく犬として生きている不思議な現実とともに……
塹壕に倒れた兵士が、背嚢に残した一片の詩のように、おれはこの荒唐無稽な人間社会に、ひとつぶの涙をこぼしひとつぶの麦のような言葉を残そう。
ネロとパトラッシュが、吹雪のクリスマスの晩に天に召されたように、おれとシーがともに天に昇る近い未来を予感しながら……
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