ようこそ、ありがとうの国へ

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 彼女は今日も、お腹の中の子に語りかける。 「赤ちゃん、聞こえますか?」 「母さんのお腹に来てくれて、ありがとう」 「あなたに会えるのが楽しみ」  彼女が寝室から出ると、リビングに居た彼女の夫が、掃除機をかけているところだった。 「ごめんなさい。私がやるよ」 「大丈夫だよ!ゆっくり休んでて。今は休むのが仕事なんだから」  夫が微笑みかけると、彼女もにっこりと笑った。 「あなた、ありがとう」 「順調ですよ。赤ちゃんに会えるのが楽しみですね」  検診後、彼女の担当医は朗らかに笑った。 「ありがとうございます」  彼女はホッと胸を撫でおろし目を細めた。 「ここ、座って」  電車内で、一人の女性が彼女に席を譲った。 「すみません」 「いいんですよ!元気な子が産まれますように!」  女性は、穏やかに微笑んだ。 「ありがとうございます……」  彼女は深々と頭を下げる。 「これ、お腹の赤ちゃんの分も」  魚屋では、店主が彼女の注文より一匹多く魚をオマケする。 「そんな、悪いです」 「いーから!いーから!赤ちゃんの分も、たくさん食べるんだよ」  魚屋の店主は、イヒヒとおどけて笑ってみせる。 「ありがとうございます」  彼女も思わず顔が綻んだ。
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