冷たい彼女の隠しごと

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 美冬の視線が僕に向くのが分かった。  僕は気になったことを聞いてみる。 「これが美冬の?」 「うん」 「レベル40?」 「うん」 「ゲームをしたの? 美冬が?」 「うん」 「じゃあここ最近の夜更しって?」 「うん。これやってた」  美冬からは「うん」という返事ばかり。  滅多にゲームをしない美冬が、この短期間で、夜も寝ずにプレイしてレベルを40まであげたって?  しかも僕には、海外ドラマを見るなんて嘘をついてまで?  この出来事は、僕が美冬と出会って以来一番の衝撃ではないだろうか。 「……でもなんで?」  そんなことをした理由が、一番の疑問。 「いきなりオンラインゲームに目覚めた理由は?」 「それは……」  僕が首を傾げると、美冬の顔が険しくなった。  言いにくそうにしていたけれど、彼女の小さな声で答えが聞けた。 「太一が、私以外の誰かと結婚するって言うから」 「…………へ?」  変な声が出た。  だって今、なんて言った?  すごい可愛いことを言わなかったか?  ちらりと美冬を見れば、彼女はむすっとしている。 「いやでも、ゲームの中だし」 「ゲームでも。嫌なものは嫌。どこかの知らない女となんて結婚させてたまるもんですか」 「どこかの女って……」  僕は思わずくすっと笑ってしまう。  これだから美冬は。  いつも冷たい反応なのに、時折僕への深い愛情を見せてくれる。  ゲームの中でも僕を誰かと結婚させたくないだなんて、愛されてるなあって思える。
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