冷たい彼女の隠しごと

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 元々感情表現が豊かな彼女ではないし、反応温度が低いのもいつものこと。  彼女との付き合いはもう四年。同棲を始めてからは一年三ヶ月。  話下手な彼女ではあるが、たまに見せる笑顔が可愛いという一面も持っていたりする。料理も美味しいし、職場の上司で仕事もできる。僕には勿体ないくらい素敵な女性。  これはうん。ちょっとした惚気だ。 「結婚したらレアアイテムとかスキルをもらえるんだ。あとこのグラフィックで行う結婚式だからかなり綺麗なんだろうなあ」 「……誰かと『結婚』するの?」 「僕? うん、そうだね。やっぱりレアアイテムとかは魅力的だし。アップデートされたらギルドの誰かに声かけてみようかな」  ギルドというのは、ゲームの中のサークルみたいなもの。  プレイヤーはみんなどこかのギルドに入り、一緒にモンスターを倒しに行ったりする。  ギルド内で声をかければ、誰か一人くらいは結婚してくれると思う。 「ふぅん。そうなんだ」 「もし結婚式挙げるときは画面を見せるね! きっと綺麗だよ」 「……へぇ」  結婚するのかと聞かれたから答えたものの、美冬からは変わらず微妙な返事。  何か言いたげな風にも見えたけど、彼女からそれ以上は何も言われなかった。
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