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「レベル40までいかないと結婚できないっていうのがほんと……。アップデート日までに何とかしないとって思って頑張ったのよ?」
僕が笑ってしまったからか、美冬は不貞腐れつつそう言った。
ただそれが分かっても、僕の笑みは消えない。
夜通し慣れないゲームでレベル上げに励んでいた彼女の姿を想像すれば、なんだか可愛く思えるのだからしょうがない。しかもそれを、ずっと僕に隠してまで一人で頑張っていたなんていじらしいではないか。僕に聞けばもう少し楽にレベルを上げられたかもしれないのに、その手は使わず堅実に実行するところが彼女らしい。
「うん。さすが美冬」
彼女の頭を撫でながら、僕は言った。
すると美冬の顔がほんのり赤らんだ。
いつもは冷たい反応しかしない彼女が、僕の前でだけ違う顔を見せてくれるこの瞬間が、僕は好きなんだ。
「ね、美冬。『結婚』しようね」
僕は美冬に、そう伝えた。
美冬はただ「うん。今夜」とだけ返してくれた。
……話の流れ的に、彼女は当然ゲームの中の話だと思っただろう。
もちろんその意味もあるけど、僕としてはもう一つ。
現実でも結婚しよう、という意味も込めていたり。
ゲームのキャラクターに先を越されるのは癪だけど、現実でも美冬の夫になりたい。
近いうちに改めて彼女にプロポーズしよう。
今回こんな隠しごとをされたお返しに、今度は僕が彼女にサプライズをしないとね。
いつも冷たい彼女でも、きっと喜んで、はにかんで、それから狼狽えるかな。
今から楽しみだ。
完
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