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あーあ!ボーっとしながら作るからこんな風になったんだ。
いい意味でも悪い意味でも香坂さんが俺の頭の中から離れてくれない。
最近香坂さんの事ばかり考えている気がするな。
「大介。食べていいのか?」
部屋着に着替えた香坂さんが既に椅子に座っていた。
「あっ、どうぞ!お口に合うか分からないですけど」
二人で食べ始め、その間に何度も香坂さんは誉めてくれる。
お世辞だと分かっていても嬉しくなってしまう。
「今度は…もう少し統一性がある料理のほうがいいな…」
食べ終わった後に苦笑いをしながら言われてしまった。
「香坂さんのせいです…」
無意識のうちに自分の口から出た言葉に驚く。
「えっ?」
「いえっ、違います!そうじゃなくて…」
顔が熱い。
自分が今どんな表情をしているか想像がつき恥ずかしさで一杯になる。
何を言ってるんだ俺は!
「何で俺のせいなんだ?」
そう言うと席を立ってソファーに連れてこられた。
整った顔が楽しそうに俺を見つめている。
「…何でもないです」
言えるわけがない。
「そうか」
それだけを言うと唇が軽く触れ合うキスを繰り返し、次第に深いものに変わっていった。
「…カレー味だな」
真面目な表情で肉の炒め物の味付けを香坂さんが言ったので、つい笑ってしまう。
香坂さんも一緒になって笑うから、これが契約の上での関係だということを忘れそうになる。
忘れてはいけない。
この暖かい唇が俺の名前を呼ばなくなる日は、必ず来てしまうのだから。
《END》
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