3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
三月。春が芽吹き出す季節のちょっと前に母さんが妊娠した。親父の宣言通りであるのだけど、そのせいで親父が家にいる時間が増えた。
「母さーーん! 掃除なんて私がやるからーー! 」
母さんが掃除機を持てば親父はそう切り返す。
「母さーーん! 洗濯なんて私がやるからーー! 」
母さんが洗濯しに行こうとすると親父はそう切り返す。
あんまり母さんに付きっきりだから、仕事やめたのか? と思って聞いてみる。
「そんな訳ないでしょ!? 育休のためにお父さんの大学の授業は大体オンラインにしたんだよ! 」
いや。美大の講師がオンラインにすんなよ。どうやって絵の指導すんだよ?
「はは! オンラインでもお父さんは指導できる! 画壇の前衛だぞ? 」
何気に中二入ってるなぁとは思ったがあんまり関わらないようにした。
はずなんだけど……。
「お父さんね、瑠璃を産むときも家事ほとんどやってくれたんだよね。瑠璃はやってくんないの? 」
母さんがにこやかに俺にそう言ってくる。俺、家事とか分かんないんだけど?
「そうだ! お父さんのために女体化して手伝ってあげようね! やっぱり父親は息子より娘でしょ! 」
にこやかに母さんは言ってくるがゴリ押しだ……。二月ほど伊織先生のスタジオのイベントもないし断るに断れない……。
仕方なく俺は部屋にこもって女体化チョコレートをかじる。
女体化チョコレートをかじるとお腹がちょっと痛くなるんだけど、ほんの一瞬。痛みが治まれば女体化は完了している。
親父のためにワンピースを着てみる。まあ母さんと一緒のときはあんまり女体化してないから母さんにもプラスになるかな?
最初のコメントを投稿しよう!