Chicken Rice Cake

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 背後から物音がした。その物音が猛スピードでこちらに迫ってくる。一定のリズムで足音を鳴らし、こちらにかけて来る。動けない僕は振り返れない。僕の横を足音がすり抜けて行った。  しかし、その足音も僕の少し先で止まった。足音の主の声が漏れた。勝利の確信が敗北の確信へと変わった時に出す声と言うのは、はたから聞くと実に情けない。でも、さっき僕も多分こんな声を出したのだろう。  足音の主が藻掻いている。僕の少し先で。彼もやっぱり、もう手も足も動かす事は出来なかった。僕は彼の様子を見て、少し笑ってしまった。笑った後で、僕は僕もまるっきり同じ状況である事を思い出した。昔、僕らの事を美しいと言った人がいたけど、やっぱり僕らは、少なくとも僕は、卑しい。
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