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僕はしばらく彼の様子を見ていた。彼は僕の存在に気付かないほどに、冷静さを失い、動くはずのない手足を必死に動かそうとした。
でも、僕はだんだん不安になってきた。彼の様子はまさしく僕と同じなのだから。もう僕らはこの状況から脱出する事が不可能なんじゃないかという気がしてきた。今までそう思わなかったのは、目の前の黄色にどうやったら届くかという事だけを考えていたからだ。
今一度、目の前で藻掻き続ける彼の姿を見る。黄色しかなかった自分の先に今、彼が飛び込んできて、彼の姿を見ていれば、僕らがとんでもなく絶望的な状況にいる事がなんとなく感じられる。僕らはこのまま死ぬんじゃないかという事が頭を過った。
だんだん、目の前の黄色が輝きを失っていく。いや、僕の目がその輝きを捉えられないほどに、眩しくなったのかもしれない。とにかく、僕にはその黄色が邪悪な灰色に見えてきた。
僕は今、考えるべき事は何かを考える。今考えるべき事は、どうやって黄色にたどりつくか、ではなく、どうやって後戻りをしてこの状況から脱するか、かもしれない。僕の頭の中を臆病な僕が占めていった。
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