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亜季と南の交際
「ねぇ南くん、一つお願いがあるの」
それを聞いた僕は「えっ、何かな? 僕にできることならなんでもするよ」と食い込み気味に答えた。
長くアプローチし続けて、ようやく僕の交際の申し出を受け入れてくれた彼女。
クールで少し冷たいようにも思えるけど、自分をしっかり持っているところに僕は惹かれた。
これまでの人生で、こんなに人を好きになったことなんてなかった。
彼女の望むことはなんだって叶えてあげたい。いや、叶えてやる。僕はそう心に決めていた。
実際、ここに漕ぎつけるまでに僕は何度も食い下がった。
僕の一目惚れから始まって、最初は話しかけても取り付く島もなかった彼女を懸命に口説き、「付き合ってください」を繰り出しては「ごめんなさい」と一蹴されてきた。
彼女とすぐにでも付き合えると思っていた僕の焦燥感は、日に日に大きくなった。その動揺は彼女にも伝わっていたと思う。
おかしい。僕は彼女のことならなんでも知っているはずなのに。
きれい好きの彼女のために、今まで疎かになっていた身なりを整えた。彼女がひそかに応援しているらしい俳優を真似て、髪型まで変えたのだ。
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