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「冷たい人?」
「そう、冷たい人。いちいち彼女の顔色を窺うような女々しいことはしないで。
できるだけわたしに対して興味を持たず、馴れ合い過ぎない関係でいてほしい。わたしも南くんがやることに干渉しないから」
「えっ、でもそれって……」
それって、付き合っていることになるんだろうか。互いに興味を持たず干渉し合わない男女は、カップルではなくてただの他人どうしなんじゃないか。
「南くん、わたしのこと好きって言ったよね?」
「もちろんだよ! 君は今まで出会った他の誰よりも魅力的だ。僕は君のためならなんだってできる」
「それなら、わたしにとって一番好みのあなたでいてくれるよね?」
僕の恋心を逆手に取ったような彼女の一言に、返す言葉をすぐには見繕えなかった。
反射的に思い出したのは、彼女がSNSで吐露していた主張だった。
『今の時代、男も女も自立していないと駄目だと思う。パートナーに何かをやってもらおう、助けてもらおうなんて考え、わたしは気に入らない。わたしはこれまでそう思いながら生きてきたし、現段階では恋人という存在を必要としていない。今後、結婚することがあっても家庭に入るつもりはない』
それを読んだ当初、率直に言って僕はがっかりした。僕が想いを寄せる人は、恋人を必要としていないというのだ。
でも、時間を置くにつれて、誰かに寄りかかろうとしない彼女のたくましさが好ましく思えてきた。
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