2つ目 “告白された数”

1/1
前へ
/180ページ
次へ

2つ目 “告白された数”

『―で、真歩も章君好きみたいでさ』 結奈は複雑な表情で話している。 『この前のお泊まり会の時に好きな人に文化祭で告るんだーって言ってて、問い詰めたら相手が章君だって言うからさぁ』 喫茶店、“綾織”(あやおり)の中が暖かいとはいえ、 もうすぐ10月も終わりなのに結奈はアイスティーを片手にしている。 制服のスカートがけっこう短い。 膝より上とか絶対寒いし多分生徒指導の先生に文句言われそう。 私はスカート切ってないから長さは膝下までだ。 『告白された数』 脳内で呟いて集中、 話している結奈をじっと見つめる。 結奈の姿が透過し、 白い文字で“7”という数字が浮かび上がる。 (7回!?結奈モテすぎじゃない‥?) 『‥聞いてる?美彩?』 『え、あ、うん』 いきなり結奈が顔を近づけて聞いてきた。 ちょっと慌てたせいで視線がずれて数字が消えてしまう。 『ねえ、逆に美彩は好きな人いないの?』 『はい!?』 飲みかけたホットココアが気管に入って噎せる。 『うっ』 『だ、大丈夫?』 『何とか‥』 私は心配する美彩に大丈夫だと伝え咳き込んだ。 まあ噴き出すよりはましかな。 『‥いないのね?』 『はい‥』 取り調べかな? でも私慣れてないから‥。 俯いて頷く。 『もう、美彩かわいいんだからさ、もったいないよ』 『かわいい‥?あ、ありがと‥』 可愛かったら私でもモテそうだけどなぁ。 いや、みんなそれなりに告白されてたりするのかな? ‥結奈がお手洗いに立ったタイミングで、 周りの人の告白された回数を見てみることにした。 (じゃあまずは‥あの人) 私が見たのは、お店の外、 窓の向こうの化粧品コーナーで商品を見ているお姉さん。 私と同じ黒髪ロング。 年齢は私より3、4つくらい上かな? 『告白された数』 ふわり。 お姉さんの姿が透け、“4”という数字が浮かび上がった。 (4回? ‥だめだ、自分からしたら多いか少ないかわからないや) けっこう美人さんだからモテそうだけどね。 結奈が多いだけ? 男性も見てみる? じゃあ‥ 私が見たのはちょうど今カウンターで注文し初めたカップルの片割れの男性だ。 20代前半くらいかな? 隣の彼女さんもそうだけど、けっこう派手めな見た目。 二人とも金髪だし。 (彼女さんごめんなさい‥) 私が小さく手を合わせ、届かない謝罪をしてから 『告白された数』 見てみる。 浮かび上がった数字は、2だった。 (2回?) 顔立ちは悪くない。 ワイルド系っていうのかな、そんな感じ。 でも2回? 失礼な話だけど思ったより少ないような‥。 あっ、でも告白って男性がすることが多いんだっけ? なんかそんな話を聞いたことがあるような気もする。 本当かは知らないけど。 ますますわかんない‥。 なら‥ 店員さんの女性を見る私。 (見た感じ、30代半ば‥?) この人はどうかな? 『告白された回数』 私は脳内で呟き、集中して見る。 この店員さんは何回かな‥? やがて店員さんの姿がシルエットになり、 “9”という数字が現れる。 (9!?) 9回ってすごくない‥? 結奈より多いじゃん‥。 やっぱりみんなそれなりに恋してるのかなぁ もう‥次はどの人を‥。 『お待たせ~』 『あっ』 キョロキョロしてたら結奈が席に戻ってきた。 ちょっとメイクが直されてる。 さすが。 『どうしたの?なんか気になる人でもいた?』 結奈が不思議そうな顔で見つめてきた。 『ううん。』 私は誤魔化してココアを飲む。 カップがもう冷めていた。 あー、なんか参考にならなかったなぁ‥。 今の私の心と冷たいココアが合ってる。 『それでさー』 結奈の恋バナがまた始まる。 私はこれを聞くのは好き。 だって今もそうだけど、恋愛って 見てもわからないから。 ‥きっと今日はこれからもまだ結奈の相談(恋バナ)を聞きながら色々見るんだろうなぁ。 時間がかかりそうだから、今日はここまで。 さて、それじゃあまた今度。 次は何を見ようかな? あなたなら何を見る? どんな数字を見たい? ……カップは冷たいけど、ココアまだちょっと温いなぁ これからに期待みたいな感じ? 捨てたものじゃないかもね。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加