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2つ目 “告白された数”
『―で、真歩も章君好きみたいでさ』
結奈は複雑な表情で話している。
『この前のお泊まり会の時に好きな人に文化祭で告るんだーって言ってて、問い詰めたら相手が章君だって言うからさぁ』
喫茶店、“綾織”(あやおり)の中が暖かいとはいえ、
もうすぐ10月も終わりなのに結奈はアイスティーを片手にしている。
制服のスカートがけっこう短い。
膝より上とか絶対寒いし多分生徒指導の先生に文句言われそう。
私はスカート切ってないから長さは膝下までだ。
『告白された数』
脳内で呟いて集中、
話している結奈をじっと見つめる。
結奈の姿が透過し、
白い文字で“7”という数字が浮かび上がる。
(7回!?結奈モテすぎじゃない‥?)
『‥聞いてる?美彩?』
『え、あ、うん』
いきなり結奈が顔を近づけて聞いてきた。
ちょっと慌てたせいで視線がずれて数字が消えてしまう。
『ねえ、逆に美彩は好きな人いないの?』
『はい!?』
飲みかけたホットココアが気管に入って噎せる。
『うっ』
『だ、大丈夫?』
『何とか‥』
私は心配する美彩に大丈夫だと伝え咳き込んだ。
まあ噴き出すよりはましかな。
『‥いないのね?』
『はい‥』
取り調べかな?
でも私慣れてないから‥。
俯いて頷く。
『もう、美彩かわいいんだからさ、もったいないよ』
『かわいい‥?あ、ありがと‥』
可愛かったら私でもモテそうだけどなぁ。
いや、みんなそれなりに告白されてたりするのかな?
‥結奈がお手洗いに立ったタイミングで、
周りの人の告白された回数を見てみることにした。
(じゃあまずは‥あの人)
私が見たのは、お店の外、
窓の向こうの化粧品コーナーで商品を見ているお姉さん。
私と同じ黒髪ロング。
年齢は私より3、4つくらい上かな?
『告白された数』
ふわり。
お姉さんの姿が透け、“4”という数字が浮かび上がった。
(4回? ‥だめだ、自分からしたら多いか少ないかわからないや)
けっこう美人さんだからモテそうだけどね。
結奈が多いだけ?
男性も見てみる?
じゃあ‥
私が見たのはちょうど今カウンターで注文し初めたカップルの片割れの男性だ。
20代前半くらいかな?
隣の彼女さんもそうだけど、けっこう派手めな見た目。
二人とも金髪だし。
(彼女さんごめんなさい‥)
私が小さく手を合わせ、届かない謝罪をしてから
『告白された数』
見てみる。
浮かび上がった数字は、2だった。
(2回?)
顔立ちは悪くない。
ワイルド系っていうのかな、そんな感じ。
でも2回?
失礼な話だけど思ったより少ないような‥。
あっ、でも告白って男性がすることが多いんだっけ?
なんかそんな話を聞いたことがあるような気もする。
本当かは知らないけど。
ますますわかんない‥。
なら‥
店員さんの女性を見る私。
(見た感じ、30代半ば‥?)
この人はどうかな?
『告白された回数』
私は脳内で呟き、集中して見る。
この店員さんは何回かな‥?
やがて店員さんの姿がシルエットになり、
“9”という数字が現れる。
(9!?)
9回ってすごくない‥?
結奈より多いじゃん‥。
やっぱりみんなそれなりに恋してるのかなぁ
もう‥次はどの人を‥。
『お待たせ~』
『あっ』
キョロキョロしてたら結奈が席に戻ってきた。
ちょっとメイクが直されてる。
さすが。
『どうしたの?なんか気になる人でもいた?』
結奈が不思議そうな顔で見つめてきた。
『ううん。』
私は誤魔化してココアを飲む。
カップがもう冷めていた。
あー、なんか参考にならなかったなぁ‥。
今の私の心と冷たいココアが合ってる。
『それでさー』
結奈の恋バナがまた始まる。
私はこれを聞くのは好き。
だって今もそうだけど、恋愛って
見てもわからないから。
‥きっと今日はこれからもまだ結奈の相談(恋バナ)を聞きながら色々見るんだろうなぁ。
時間がかかりそうだから、今日はここまで。
さて、それじゃあまた今度。
次は何を見ようかな?
あなたなら何を見る?
どんな数字を見たい?
……カップは冷たいけど、ココアまだちょっと温いなぁ
これからに期待みたいな感じ?
捨てたものじゃないかもね。
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