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 斜向いの有名コンビニチェーンの店舗オープン、それに加え、有名コンビニチェーン大学店のオープンを迎えた。その日より、売上は目に見えて減った。減った理由は他でもない「全国区の有名なコンビニが出来たからそっちに行こう」そう考える者が多かった、それだけである。店長も「始めのうちだけだろう」と楽観視し、いつかは客も戻ってくると(けん)に徹していたのだが、一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月と客が戻らずに、自分の店が蕭条(しょうじょう)とした雰囲気になってしまった。やはり、斜向い側の住宅地から来る客と、大学生というメインの客層を丸っと持っていかれてしまったのは痛かった。 人と言うものは人の集まる場所に向かうもの、工場の客までをも持っていかれてしまったのである。何故に斜向いのコンビニに態々行くのだろうか。答えは明白、斜向いに行くための信号と横断歩道が出来たからである。 トドメは駅ナカと駅チカ(近くの方の意味)にまでコンビニエンスストアが開店し、駅から出る客すらも取られてしまった。 店長は毎日を暇で持て余すようになり、床清掃と売れぬ店頭在庫の納品を繰り返すだけの毎日になってしまった。アルバイトやパート達も「すいませんが……」と、常套句の枕詞を述べ、適当な理由を宣った後に辞めて行く、店長は現状では彼らに給料を払うだけで赤字であるために、これ以上給料を払わなくて済むという意味の感謝を込めた「ありがとう」の言葉で彼らを見送った。 尚、辞めた者たちは斜向いのコンビニエンスストアや、大学内のコンビニエンスストアにその職場を変えるのであった。無論、時給はそちらの方が上である。 店長はバックヤードにて半年前に貰ったフランチャイズ契約の渉外担当の名刺をじっと眺めていた。 「このコンビニ戦争、やはりこんな個人コンビニでは生きていけないか」 店長は有名コンビニチェーンとフランチャイズ契約を交わし、二十年以上続けてきたこの店と別れを告げることにした。
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