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 それから半年後…… 有為転変は世の習いままに跡地に新しい店舗が入ることになった。何と、同じコンビニチェーン店である。斜向いを挟んで同じコンビニエンスストアがあると言う状態になってしまった。 オーナーは「斜向かいに同じ店建ててどうするのかねぇ」と、不思議に思いつつも共倒れを心配するのであった。無論、斜向いの店は自分の店と同じエリアマネージャーの担当である。 気になって尋ねてみると意外な答えが返ってきた。 「ドミナント戦略ですよ。素人さんには不合理に見えますが、マーケティング面でみると合理的なんですよ」 「斜向かいに同じ店があるのが合理的なんですか?」 「ええ、ドミナントとは『支配』『優位に立つ』ということです。この町内に二店舗、このお店と斜向かいにあるお店ですね。密集させることで、この地域のシェアを支配したと競合他社にアピールする狙いがあるんです。支配されている場所に、競合他社もお店を建てようなんて考える人はいないでしょう?」 「確かに」 「後は知名度の問題ですね。斜向かい同士に同じ店があるのを毎日見ていたら、お店の名前を嫌でも覚えるじゃないですか? 我社としてはこれだけで十分に地域の方々への宣伝(プロモーション)になると言うわけです。認知度の増加ってやつですね」 「成程」 「認知度の増加は我社の利益と比例します。そうですね、私があなたに経営のノウハウを教えた時に『ホットスナック』のマニュアルは厳守するように教えたことは覚えてますか?」 「はい。油の量、揚げ時間、塩加減…… 常にマニュアルに従ってますよ」 オーナーはフランチャイズに入る前からホットスナックを店に出していたのだが、フランチャイズに入った後はこれまでの独自でのホットスナックの調理方法を捨てさせられていた。 「どこに行っても同じ味が出てくるって凄いことですよ。我社(ウチ)に限らず、チェーン店と名のつくものであれば当たり前のことです。我社(ウチ)のコンビニのホットスナックが美味しければ、出先であっても食べたいと思うでしょう? それに限らず、最近ではプライベートブランドも充実しています。出先でも我社(ウチ)のコンビニを利用したくなるじゃないですか。それが認知度の増加と我社の利益が比例するってことが言いたかったんですよ」 「こうして認知度が増えれば、私のようなフランチャイズ契約に乗る方も増えますね。脱サラしてオーナーになるにせよ、土地を遊ばせている方も『認知度』があれば安心してフランチャイズ契約をしようと考えますね」
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