感謝のないありがとう

Thank you……？

　時は流れ……　オーナーも還暦を迎えた。
周りはまだ若いとは言ってくれているが、体の節々が痛くなり動くのも億劫になり、体の衰えを感じ始めていた。近頃は少子高齢化の影響のせいか大学生のアルバイトも採用できず、妻と二人で二十四時間の交代制でレジを打つツーオペとなっていた。
オーナーは引退を考え店を閉めようとしたのだが、コンビニ本部からすれば最高の立地の店を手放したくない。エリアマネージャーに「どうしても店を続けさせろ」との厳命がされ、必死の説得が行われるのであった。しかし、オーナーは頑として聞き入れずコンビニ本部に土地の権利を渡し強引に引退をするのであった。コンビニ本部は新しいオーナーを入れられるとして大喜び。これまでの貢献に対しエリアマネージャーは「ありがとう」とオーナーに言ったのだが、感謝の念を覚えることはなかった。感謝しているのはこれまでの貢献ではなく土地を譲ったことにあると見抜いていたからである。