生きて、生きて、ただ生きて。

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 *** 「まるで、SFの冒険小説でも読んでるみたい」  コロネは私とは真逆の性格で、とてもお喋りだった。明朗快活、きっと元の惑星でも人気者だったのだろう。地球の文化にも興味津々で、暇さえあれば私の部屋の中を飛んで回った。そして、私が尋ねると、自分の惑星に関する話を楽しそうに話してくれた。水と緑に覆われた、地球のように自然豊かなグリーンデイズという惑星の事を。 「地球みたいな知的生命体が暮らしていて、豊かな自然がある星なんて、宇宙にはほとんどないとばかり思ってた」 「そうでもないよ。僕達の惑星はまだ宇宙に出る技術が未発達だから、惑星の外に出る人は少なかったけれどね。僕みたいな物好きな変人くらいなもんさ」 「自分で物好きな変人とか言う?普通」  異星人なのに普通に会話が通じるのは、彼が異星人の言葉でも翻訳できる特別なデバイスを持っているかららしい。何でも、このテの技術は彼らの惑星がある銀河系ではごくごく当たり前のものなのだそうだ。地球の技術は、宇宙全体で見ると相当遅れているということらしい――残念なことに。 「そんな素敵な惑星なら、ずっとそこにいればよかったのに。どうしてまだ開発途中の宇宙船を使ってまで、グリーンデイズの外に出てきたの?死んだら元も子もないでしょ。今回だって、私の家の庭に落ちてきたから助けてあげられたようなものの」  それが一番の疑問だった。彼の惑星は、彼の話が正しいのであれば地球以上の緑があり、綺麗な空気があり、少しばかり一部の科学技術が遅れているだけで多少の魔法文化もある夢のような世界であるという。故郷が嫌いで飛び出してきた、というのならわかる。でも私が聴いた印象では、コロネは故郷を嫌っていない。むしろ、大好きな惑星だ、というイメージしか伝わってこないのだが。  私が尋ねると、彼は私の学習机にちょこんと座ってとんでもないことを告げたのだった。 「まあ、理由はいろいろあるけどね。一番の理由はこれかな」  そう、まるで朝食のメニューが卵焼きで美味しかった、なんて軽く話すように。 「グリーンデイズは、もうすぐ滅んじゃうんだ。ファラビア・テラって惑星が侵略してくるせいでさ。どうせ星ごと滅んじゃうなら、その前に宇宙に飛び出してやろうと思ってねー」
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