向き合うということ

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向き合うということ

 翌日、不安を抱えながらも、あかりはお弁当を買いに朝から自転車を走らせた。いつもと変わらない暑さなのに、体の中心はひどく冷えているような感覚。普段おとなしい心臓が、バクバクいっている。  いつもと同じ時間に駄菓子店に入ると、先週と変わらない混雑ぶり。ここに通い始めてすぐに弁当の在庫を確認していたのに、いつの間にか和也の背中ばかりを探している。自分でも今まで気が付かなかった変化に、いまさら気が付いた。  弁当の残りにも気を配らなければならないのに、どうしても和也の姿を探してしまう。落ち着きと元気がないあかりを見つけて、初音が店の奥に声をかけた。店内は混雑しているから、初音の行動にあかりは気が付かないままだった。  会計を済ませて自転車に乗り、弁当を保冷バッグにしまい込む。和也の姿は、見つけられなかった。 「先生! 」 初音に呼び止められて、勢いよくあかりは振り向く。 「和也に声をかけたんだけど、どうしても店の奥から出てこなくて」 あかりが悲しそうな顔をしている原因は、和也にもある。それは和也自身もわかっている。 「昨日和也が帰って来て、先生を怒らせてしまったと言ってました。言っちゃいけなかったことを言ってしまったと、がっくり肩を落として。今日先生に謝ると朝は言ってたんだけど、どうしても勇気が出なかったみたいで」 初音の言葉に、あかりは首を振る。 「そんなことないんです、私が大きな声を出して和也君を怒ってしまったのがよくなかったんです」 昨日の和也のおびえた表情が、あかりの脳裏によみがえる。それを聞いて、初音は昨晩の和也の言っていたことがなんとなく理解できた。 「先生に、ワッて怒られたんだ。言っちゃいけないこと言っちゃって。嫌われたかもしれない。ごめんなさいも言えないまま、帰ってきてしまった」 ワッと怒られたというのは、大きな声だったという意味だった。 「詳しい話を聞きたいけれど、先生も急がなきゃ遅刻しちゃうわね。これ、和也から。仲直りしたいって、朝作ってました。和也本人が、先生に渡すつもりだったものです。休憩時間にでもつまんでください」 初音から手渡されたのは、小さな茶色い紙袋。驚きつつもそれを受け取り、袋の中を覗く。紙袋の中には、小さなビニール袋に個包装されたマドレーヌと、かわいらしくラッピングした小さなクッキーが入っていた。 「こんなにたくさん……! 」 和也からの気持ちが、じんわりと伝わってくる。改めて昨日の自分の行動を悔いていると、あかりの目からほろほろと涙がこぼれた。 「ありがとうございます。元気が出ました! 明日は会えるといいなと、お伝えください」 初音にそう伝え、ニコリと微笑んであかりは中学校へと自転車をこいでいった。  あかりの背を見送って店に戻ると、和也が掃き掃除をしていた。 「渡してくれてありがとう。先生、怒ってた? 」 和也もあかりのことが気になっていたし、自分で渡すつもりだったお菓子を初音に頼んでしまったことを、いまさら後悔していた。 「怒ってなかった。明日は会えたらいいなって言ってたよ」 不器用な和也の手助けを、どこまですべきなんだろうかと、今回の一件で初音は考え始めているところである。 「明日はお店に出る。……出るよ」 今まで逃げることはあっても、ピアノとお弁当作り以外のことと向かったことは少ない。あかりとは、ちゃんと向き合いたい。和也は外見上の変化はあまり見られないが、心はちゃんと前を向いていると、初音は和也を見て感じた。  午前中の仕事を終わらせて昼休憩に入り、職員室でお弁当を食べる。相変わらず栄養バランスの整った弁当で、夏の暑さにも負けないおいしさだった。  和也から受け取った紙袋をこっそりのぞいていると、隣の席の女性先輩教師が声をかけてきた。 「なにそれ? 」 彼女はあかりより少し年齢が上で、いつもあかりに優しくアドバイスをくれる優しい先輩。 「今朝いただいたんです。たくさんあるので、おひとつどうぞ」 「ありがとう」 彼女に紙袋を手渡すと、それをのぞき込んでマドレーヌをひとつ取り出した。 「戸高さん、お手紙が入ってるけど……? 」 「え? 」 返ってきた紙袋の中と再度覗くと、クッキーの袋とマドレーヌの間に手紙が挟まっていた。初音さんが気を使って入れてくれえたのかもしれないと、取り出した封筒には、女性の文字ではない少し武骨な文字。『戸高あかりさま』と書かれている。 ―……もしかして?! あかりは急いで手紙を取り出す。手紙が昨日の非礼をわびた内容で、明らかに和也の書いたものだった。文末には『明日、お店で待ってます』と書かれていて、無意識に顔がほてるのを感じた。 「彼氏……? 」 「違いますっ! 」 あかりは手紙を隠しつつ、自分のマドレーヌも取り出してすぐに紙袋を保冷バッグの中に押し込んだのだった。  純粋にうれしいと感じる。昨日のことを思い返してくれたことも、手紙をくれたことも、和也がお菓子を渡しいてくれたことも。すべて純粋に、あかりの心の中に溶け込んでいく。  翌朝、いつもよりも早めに家を出て、駄菓子店に向かった。お弁当の販売直後の時間で、いつもあかりが店に到着したときよりも多い人数が店の中に無理やり入っている印象。ぎゅうぎゅうパンパンとは、このことを指すのだろう。入れそうな気配が、全くしない。  結局いつもの時間よりも少し早い時間に店が空き始めて、隙を見て入店。相変わらずの人数と熱気で、弁当を取るのが難しい。  和也に姿を見つけようとキョロキョロしているが、なかなか見つけ出せない。もしかしたら今日も会えないかもと思った時。 「あれ? 早いね、先生」 首にタオルとかけた和也が、弁当の追加が入ったコンテナを持ってやってきた。弁当は、並べたそばから誰かが取っていく。 「ちょっと待ってて」 弁当をさっさと並べて家の奥に入っていき、和也は何か手に持って駆けてきた。 「これ。先生のお弁当」 「いいの? 」 「うん。中身おんなじだけど」 汗をかいているものの、和也の表情は相変わらず涼し気そのもの。自分ばかりが暑いような気がして、あかりは和也を見上げては自分の汗を拭う。  会計が終わって、店から人が少なくなっていく。 「先生、日曜は練習の時に言わなくていいことを言ってしまってすみませんでした」 いつの最後に会計をするあかり。待ち時間の間、和也はあかりにちゃんと謝った。 「私こそ、きつい言い方をしてしまってごめんなさい」 あかりも和也の目を見上げて、謝罪した。このまま和也と疎遠になってしまったらと悩んでいた時のことが、ずいぶん前にさえ感じてしまう。 「あと、指揮棒をじっと見てしまうのも、僕なりに工夫してみる。来週の練習も参加してもいいですか? 」 「もちろん! 練習に参加して、一緒に音楽を作ってください! 」 嬉しそうに自分を見上げて微笑むあかりを見ていると、今まで感じたことのないむずがゆさを感じて、和也はゆっくりとあかりから目をそらす。 「……頑張ります」 どこか困ったような、戸惑っているような表情。和也が見せる初めての表情を、あかりは思いのほかじっと観察してしまったのだった。  昼からの練習は、今現在リストのピアノ協奏曲第2番だけに絞り込んでいる。もともと暗譜済で、今すぐ弾けと言われれ弾けるくらいのクオリティに仕上がっていたが、先週の合同練習でのミスがある。指揮棒をみず、手元も見すぎないように弾くには、どこを見ればいいのか。周囲の音に併せてピアノを弾くのは初めてだから、オーケストラとどう寄り添えばいいのか。いろいろなことを考えながら、練習を行う。  こんな練習方法は、今まで試したことがなかった。和也が向き合ってきたのは、ピアノと音楽だけだったから。ピアノ以外の楽器との向き合い方、自分以外の演奏者との向き合い方。未経験だから、どうすればいいかわからないことだらけのまま、思考を凝らして練習する。  何が正解なのか、何が不正解なのか。それだけでもわかれば、もしかするともっと楽しいのかもしれない。 ―一二三さんがいてくれたら、なんて声をかけてくれたんだろう 練習の合間に一二三が残したメトロームを抱えて、ピアノの椅子に座ったまま、コンクリートの天井を見上げて思う。  行き詰ってしまったとき、和也は香鈴にメールをすることが多い。練習方法や、オーケストラとの演奏など、いろいろなことを香鈴は和也に教えた。  和也と再会したときは幼さばかりが先行していたイメージだが、コンチェルトをやると決めてからの和也の努力は、並大抵ではない。幼いころに泣きながら学校で過ごしていた和也が、こんなに立派になってと、親のような気持ちさえ芽生えそうになる。  和也が一番気にしていたのが、演奏中に見るべき場所だ。基本的に自分の手元を見ない、動くものに気を取られる自分の特性を180度変更することは、不可能に近い。そのことを、香鈴に連日相談していた。  手元を全く見ないピアニストに出会ったことがないだけに、香鈴も頭を抱える。香鈴は、ピアノが弾けない。一人で抱え込んでも解決策が見いだせない気がしたので、和也い許可を得てほかの楽団員に相談のメールと飛ばした。  この楽団は、専門的にピアノを弾いたことがある人間そのものが少ない。副科でピアノを弾いたけれど、それっきりになっている人ばかりだ。ピアノを弾いていた時は手元だけを一生懸命に見ていたから、和也が手元を見ずにピアノを弾いている姿そのものに違和感を感じたのをよく覚えている。  あれだけ弾けて、手元も見ない。ということは、考えられないほどの練習を積んできたということ。だからこそ、メールが回ってきた楽団員は、和也の視線の問題を解決するために仕事の合間を見つけて思考を凝らす毎日を過ごした。  あかりにもこのメールは回ってきていて、どうしたものかと日々考えている。動くものに目が行く、という特性。仕事が終わって帰宅して、自室で雑務をしていると、あることが浮かんですぐに和也にメールとした。 『こんばんは。和也君、ピアノを弾くときっていつもどこ見てるの?』 普段一人でピアノを弾いているときは、指以外に動くものの方が圧倒的に少ない。 『こんばんは。普段はピアノの蓋に映った鍵盤を見てる』 和也がピアノを弾いているとき、猫背以外に違和感を感じなかったのは、視線がある程度鍵盤に近かったからだ。 『そうなんだね! コンチェルトの時、ソロパートはその弾き方でいいかも』 リストのピアノコンチェルト2番は、ピアノのソロパートがある。その部分は、もしかするとこれで解決するかもしれない。 『そうだね、ありがとう』 和也からのメールを眺めながら、あかりはゴロンとベッドに寝転ぶ。ソロパートも大事だが、オーケストラとピアノが一緒に演奏している場面の方が圧倒的に多い。  解決らしい案が浮かばないまま、週末の練習日を迎えることになった。  練習日当日、和也の軽トラに香鈴が乗って、練習ホールに向かう。車内での会話も、和也の視線の置き場でもちきりだった。ああでもない、こうでもないと話し合っていたが、やはり二人だけの意見では良い案は浮かばず仕舞い。  困り果てながら会場に入ると、楽団員たちが和也を見て、待ってましたと言わんばかりに押し寄せてきた。 「なんかいい案は浮かんだ? 」 「いろいろ考えてみたんだけど、実施できるかわからなくて」 「今日はいろいろやってみようと思うけど、ついてこれそう? 」 彼らの熱烈な歓迎に戸惑いながらも、和也は何度か頷く。和也なりに、コミュニケーションの取り方を模索しているのだ。  練習開始前、和也はあかりに声をかけた。 「どうしたの? 」 「あの、これ……。音声、録音して明日からの練習に活かしたくて……。録ってもいい? 」 人数が多い場所では、まだどぎまぎしているが、和也はちゃんと自分のやりたいことを伝えてくるようになった。そのことも、あかりにとってはうれしい進歩である。 「みんなに聞いてみようね! 」 和也の提案に対して、あかりは笑顔を返して楽団員に録音の許可を得る声掛けをした。自分よりもずいぶんと背が低いのに、たくさんの人に呼び掛けるときは大きな声が出るあかり。そういえば、中学校の先生だった。と、和也はあかりの背中を眺めながらぼんやりと思う。  楽団員たちは、和也の録音の許可を快諾した。嫌な雰囲気にならなくてよかったと胸を撫でおろし、和也は全員に頭を下げる。  練習が始まり、初音から借りた年代物のラジカセの録音ボタンを押す。もちろん昔懐かしいテープ式なので、録音ボタンを押すと“ガチャン! ”と大きな音がした。  前回指摘された、和也の視線が指揮棒に集中してしまうという難点。和也なりに考えて、ピアノだけを弾くときのように、基本的にピアノの蓋に映る鍵盤だけを見ることにした。  だが、そうすると、指揮者とアイコンタクトを取って弾くパートに違和感がある。その直前だけでも指揮者を見るという声もあったが、微調整の場所が多すぎて和也がついていけない。  なにより、手元だけ見ているときの和也の音は、指揮棒を見続けていた時と比べると、広がりに欠ける。視線を取るか、音を取るか。収録であれば別にどこを見て弾いていようが、即決で音を取る。しかし、今回はお客さんがいるから、音だけを取るわけにはいかない。  ああでもない、こうでもないと、練習の合間合間に話し合いを重ねていると、練習時間の終わりが見え隠れし始める。8月の終わりは、もう近い。9月に入ったら、練習だけに集中しなければならないから、みんな焦っていた。  自分のことでみんなが意見を出し合っているとはわかっていても、話し合いの中に入る勇気は和也にはない。ただ、自分のことで時間を割いてくれているのに、何もせずただ黙って聞いているだけというのは嫌だと思った。 ―みんなが不快にならない、問題が解決に向かうような案…… 考えてはいるものの、普段が無表情だから和也は何も考えていないと思っている楽団員もいて、彼らからは冷たい視線が送られる。 「あんた、今何考えてるの? 」 コンマスの席に座る木本から声をかけられ、和也はピアノの椅子に座ったまま彼女の方に身体を向ける。 「指揮棒とピアノの蓋以外だと、どこを見ればおかしくないか。考えてた」 テレビでピアノコンチェルトを見て勉強したが、いつの間にか曲に気を取られてしまっていて、結局映像からは何もヒントが得られなかった。だから、どこを見れば違和感がないかを考え続けて一週間を過ごした。 「二か所しか動いてないわけじゃないんだから、ほかの動いてる場所を見ればいいんじゃない? 第二バイオリンとか、全く見ないの? 音も近くで聞こえてるでしょうに」 そういわれてみればと思って、和也は第二バイオリンのメンバーに視線を向ける。若い女の子が和也と目を合わせてあたふたしていた。  自分と目が合ったことが嫌だったのかと思い、和也もすぐに視線を外す。そして、木本のところに腰を低くしたまま歩いて行って耳打ちをした。 「僕、あのお姉さんに嫌われてるみたいだけど、見ても大丈夫なのかな」 自分のアドバイスが和也に響いていい案を持ってきたのかと思って木本は耳を貸したのに、期待外れの和也のそれに眉間にしわが寄る。 「嫌われてないわよ。あれはあれでいいの、ほっときなさい! 」 今度は木本がイライラし始めてしまい、これはまずいと和也は退散。先ほど木本からもらった案を、あかりに話してみた。 「試してみましょう! 第二バイオリンの方たちに少し話をしてくるからね! 」 あかりは先週を皮切りに、とても明るくなった印象である。はきはきと楽団員に話をして、ときには周辺に笑顔がこぼれる。  笑うことはいいことだ。わかっているのに、あかりの笑顔を見ていると、和也の心がかすかに疼く。  第二バイオリンにメンバーとあかりが話をして、この日最後の練習をすることになった。練習開始前に、あかりは指揮台から降りて和也のいるピアノの方へと歩み寄る。 「和也君」 鍵盤から顔を上げると、笑顔のあかりがいる。 「はい」 あかりの目を見て、無表情に近い表情で和也は答える。 「第二バイオリンが鳴ってるときは、バイオリンの方を見ても大丈夫だからね。無理はしないように、視線を動かしてみて」 「わかった」 「……和也君? 」 「はい? 」 和也の様子になんとなく違和感を感じたが、それが何かはわからなくて。 「ううん、何でもない。じゃあ、今日最後の練習しましょう! 」 あかりは和也に声をかけて、指揮台に戻っていった。  第二バイオリンに視線を向けることを含めた練習をビデオ録画して、あかりがそれを回収。楽団員の手ごたえとしては、今までで一番良かったと思う人がたくさんいた内容だった。  練習の最後に一番いい演奏ができたということは、とてもいいことだ。久々に満足できる練習内容だったので、楽団員の表情も晴れやかそのものだった。  練習を終えて、各々帰宅。和也は自宅の駄菓子屋まで軽トラを走らせ、店の前で香鈴を見送って駄菓子店の入り口から家の中に入った。  台所にいた初音の耳に、ガラガラというガラス戸の音が入ってくる。和也の帰宅に胸が躍っていたが、畳にドシン! と何かが落ちたような音がして、急いで居間に向かった。 「和也? 」 初音が居間にたどり着くと、仰向けになって横になり、目元を腕で覆った和也が目に飛び込んできた。 「初音さん……、頭痛薬ちょうだい……」 たくさんの人の中で緊張しっぱなしな上に、今まで触れたことのない間近でのオーケストラの音、全員でひとつの音楽を作っていくというプレッシャー。そのすべてが和也にのしかかっていた。 「ちょっと待ってね」 初音は、急いで居間の茶箪笥から頭痛薬を取り出す。 「熱さましの冷たいシートも……。頭が痛くて、熱がある」 知恵熱、といっていいのだろうか。練習に行く前は何ともなく家を出て、こんなにも疲弊しきって帰ってくるなんて、全く想定していなかった。 「……コンチェルト、やめる? 」 こんなに無理をしてしまうならと、初音は和也に問いかける。 「どうして? 」 和也は目を覆っていた腕をずらして、片目だけを眩しそうに細めて初音を見上げた。 「こんなにきつそうなのに、次も必ず行きなさいとは、私は言えない」 心配そうに自分を見つめる初音を見て、和也はのっそりと体を起こす。 「やめない。最後までやる。みんなとやりたい」 こめかみ部分に手を置きながらも、和也はまっすぐに初音を見つめて断言した。  誰かと向かい合うこと。自分の知らない音楽と向かい合うこと。それは、今まで体験したことのない、並々ならない苦労もあるはずだ。そこから逃げずに、正面から向かい合う和也のゆるぎない目は、若い時の一二三とよく似ている。 「わかった。来週から頭痛薬を持って行ってね。頑張って」 私は、大切な人の背中を押そう。初音はそう思い、和也に微笑みかけて、大人に限りなく近くなった和也の頭を撫でた。
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