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私の部屋の天井には、生き物が住んでいる。
気づいたのは5才の時、お布団に潜りこみ眠ろうとすると、天井に1つの顔があった。当時は親に誰かいるといっても信じてもらえず、夜な夜な1人で見つめていた。
その子に名前をつけたのは7歳の時。
その日は母親に怒られて泣いたまま布団に潜ると、そこには悲しそうな顔をした顔があった。その日以降、私はその子の事を「感情さん」と呼ぶようになった。
私が嬉しい時は笑顔、泣いちゃった日には悲しい顔、友達と喧嘩してイライラした時には怒り顔。
私の気持ちを一緒に共有してくれるのが感情さんだった。
8歳の夏、私は引っ越しが決まった。
感情さんとお別れするのが嫌で、必死に駄々をこねたがどうにもならず、感情さんとお別れする前日になってしまった。
ここ最近の感情さんはずっと悲しい顔で、私の気持ちを共有してくれている。最後の今日も、感情さんは悲しい顔をしているだろうと布団に入り、天井を見てみた。
今日の感情さんは、笑顔だった。
私はすごく悲しいはずなのに、感情さんは悲しい顔をせず、怒った顔もせず、ただただ笑顔だった。最初はどうしてだろう?私とお別れするの寂しくないのかな、そんな事を考えていたが、感情さんは私が眠りに落ちるまで笑顔を絶やさなかった。
感情さんに別れを告げ、新しい家に来た。
新しい家はピカピカで、あんなに悲しかったのに少し嬉しい気持ちもあった。
引っ越し作業で疲れ、新しい部屋のベッドで眠りにつこうと天井を見た時、そこには感情さんがいた。
ただこの家の感情さんの色は白く、よく目をこらさなければ気づかない程小さな存在だった。
よく目をこらし、感情さんを見てみると、笑顔にも見えるが少し目をこらすと悲しい顔にも見えた。
この家の感情さんは少し変なの。そんな事を思って少し可笑しくなり、笑いながら眠りに落ちた。
感情さんとのお別れは寂しかったが、この家の感情さんとお友達になれそうで心が少し軽くなった。明日の感情さんはどんな顔をしているのかな。
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